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私的 児童文学作家事典〔海外編〕カ行

2018年7月15日 鈴木朝子

ガスター,モーゼス Gaster, Moses(1856~1939)
 ルーマニア出身のユダヤ人の文学者。ブカレスト大学、ドイツのライプチヒ大学を卒業。ブカレスト大学でルーマニア語とルーマニア文学の教授を務める。ユダヤ民族運動に力を入れたため追放されてイギリスに渡り、オックスフォード大学で教えるほか、民俗学協会の会長を長く務めた。1920年代に、口伝えに語られてきたルーマニアの昔話を集めた二冊の本を出版。日本版の『りこうなおきさき』はその中から13編を選んで訳したもので、表題作の言葉遊びなどが楽しい。
カーター,ピーター Carter, Peter(1929~1999)
 イギリスの児童文学作家。マンチェスター生まれ。スラム街で育ち、13歳から大工の仕事をする。のち文学や歴史に興味を持ち、29歳で奨学金を得てオックスフォード大学に入学。卒業後バーミンガムで移民に英語を教える学校の副校長をしながら作品を執筆。8世紀のイギリスを舞台にした『果てしなき戦い』(1974)は、バイキイグの侵略や教会や野盗としての生活の間で翻弄される少年のすさまじい魂の遍歴を描いた力作である。重厚で思索的な歴史物語が多く、他に産業革命を扱った『黒いランプ』(1973)、ガーディアン賞を受賞した『反どれい船』(1980)などがある。
ガーナー,アラン Garner, Alan(1934~  )
 イギリスの児童文学作家。チェシャー州生まれ。オックスフォード大学に学び、学生時代は短距離の選手として活躍した。早くから演劇に興味を持ち、大学を中退して兵役に就いたのち作家を志す。ウェールズや北欧の伝説などをもとにして、省略の多い、しかし骨太な文体のファンタジーを描く。チェシャー州の地元を舞台にした『ブリジンガメンの魔法の宝石』(1960)『ゴムラスの月』(1963)のほか、マンチェスターのスラム街から始まる『エリダー』(1965)などの作品がある。カーネギー賞とガーディアン賞を受賞しテレビ映画化もされた『ふくろう模様の皿』(1967)は、ウェールズの伝説『マビノギオン』の話の一つに思春期の少年少女の心理が絡む現代小説でもあり、少々複雑だが興味深く読める。
カニグズバーグ,E.L. Konigsburg, Elaine L.(1930~2013)
 アメリカの児童文学作家。ニューヨーク生まれ。カーネギー大学で化学を専攻、卒業後結婚。研究室で化学者として働いたのち、ピッツバーグ大学大学院に入って生物学を学び、フロリダの私立女子高で化学と生物を教える。三人の子の子育てをしながら作品の執筆を始め、処女作『魔女ジェニファとわたし』(1967)と、美術館に家出するという発想が新鮮な『クローディアの秘密』(1967)は、ともに翌年のニューベリー賞候補となり後者が受賞した。現代の都市に暮らす子どもたちの心理や日常生活を、適確な表現で巧みに描くことに定評がある。他の作品に、母親が監督になった野球チームでのユダヤ人の少年のユーモラスな物語『ロールパン・チームの作戦』(1969)、「モナ・リザ」をめぐる謎を扱った歴史物語『ジョコンダ夫人の肖像』(1975)、再度ニューベリー賞を受賞した『ティーパーティーの謎』(1996)などがある。
ガーネット,イーヴ Garnett, Eve(1900~1991)
 イギリスの児童文学作家・挿絵画家。イギリス中部の裕福な家庭に生まれる。画家を志し、奨学金を得てロイヤル・アカデミーに学ぶが、健康を害し中退する。ある本の挿絵のために不況下のロンドンの貧民街を訪ねたときの経験から、イギリスの児童文学史上初めて労働者階級の子どもたちを生き生きと描いたとされる作品『ふくろ小路一番地』(1937)を著し、カーネギー賞を受賞。ユーモアにあふれた元気なおしゃべりのような文体で一気に読ませる楽しい話である。のちに続編も書かれた。
ガネット,ルース・スタイルス Gannett, Ruth Stiles(1923~  )
 アメリカの児童文学作家。ニューヨーク生まれ。ヴァッサー大学卒業後、医学や電波探知機の研究所で化学技師として働く。1947年に結婚後、7人の子の母親となる。児童文学に興味を持つようになって、児童図書協議会の職員を務めながら、処女作『エルマーのぼうけん』(1948)を発表、ヘラルド・トリビューン誌賞を受賞。豊かな空想にあふれた楽しい冒険物語で、細かな描写が子どもたちに喜ばれ、続編『エルマーとりゅう』(1950)『エルマーと16ぴきのりゅう』(1951)とともに幼年向けのファンタジーの名作として読みつがれている。
ガーフィールドレオン(リオン/リアン Garfield, Leon(1921~1996)
 イギリスの児童文学作家。サセックス州ブライトン生まれ。美術学校に学んでいたが、第二次大戦に衛生兵として従軍、戦後ロンドンの病院で検査技師を務めながら作品を執筆。処女作『ジャック・ホルボーン』(1964)の出版後、専業作家となる。18世紀のイギリスを舞台にしながら現代の人間のあり方を追及する作品が多く、事件に巻き込まれるスリの少年を描く『ねらわれたスミス』(1967、1987年にフェニックス賞を受賞)、フランスとの戦争の中の『少年鼓手』(1970)などがあり、『霧の中の悪魔』(1966)ではガーディアン賞、『ジョン・ダイアモンド』(1980)ではウィットブレッド賞を受賞。比喩や視覚に訴える表現を多く用いた華麗な文体で知られる。エドワード・ブリッシェンと共著でギリシア神話を題材とした『ギリシア神話物語』(1970)『金色の影』(1973)という作品もあり、前者でカーネギー賞を受賞した。

キプリング,ラディヤードキップリング,ラドヤード Kipling, Rudyard(1865~1936)
 イギリスの作家・詩人。インドのボンベイ生まれ。6歳でイギリスに送られ教育を受ける。18歳でインドに戻り、ラホールなどで新聞記者として働きながら詩や短編を発表。日本を含む世界各地を旅行し、旅行記も著す。1892年に結婚後しばらくアメリカに住むが、のちイギリスに帰り、多くの作品を執筆。子ども向けの作品の中の代表作、オオカミに育てられる少年モーグリの話を含む『ジャングル・ブック』(1894・1895)は、自然の掟と人間社会への批判を交えた一連の物語で、歯切れの良い冒険物語でもある。インドを舞台にした作品が多く、帝国主義的なところもあるが、健康的な正義感を持っているとして広く受け入れられた。1907年にノーベル文学賞を受賞。
ギャリコ(ガリコ),ポール Gallico, Paul(1897~1976)
 アメリカの作家。ニューヨーク生まれ。コロンビア大学在学中第一次大戦に従軍し、戦後復学して理学部を卒業。「デイリー・ニューズ」紙の記者となり、体験取材などを通して売れっ子のスポーツ・ライターとなる。記者生活のかたわら作品を執筆していたが、39歳のときイギリスに移って専業作家となる。第二次大戦下のイギリスの漁村を舞台にした画家と少女の物語『白雁物語』(1941)で一躍有名になる。少年の猫への変身譚『さすらいのジェニー』(1950)は、猫の生活をリアルに描いていて興味深い。3回転生した猫の物語『トマシーナ』(1957)、海洋パニックもの『ポセイドン・アドベンチャー』(1969)は映画化された。情愛豊かな文体で、他に女性の一生を寓話化した『雪のひとひら』(1952)、子ども向けの『トンデモネズミ大活躍』(1968)、<ハリスおばさんシリーズ>などがある。
キャロル,ルイス Carroll, Lewis(1832~1898)
 イギリスの作家・数学者。本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。チェシャー州デアスベリ生まれ。ラグビー校を経てオックスフォード大学に入学、卒業後もクライスト・チャーチ・カレッジに残り、のちに数学の教授となる。生涯独身で少女と過ごすことを好んだと言われ、パズルやゲームを考案したり、写真に凝ったりした。学寮長の娘に語った話をもとに書いたナンセンス・ファンタジー『ふしぎの国のアリス』(1865)と続編『鏡の国のアリス』(1871)は、当時の子どもの本にあった教訓を廃し純粋に楽しみを追及したものとして評価されている。独特な言葉遊びが含まれ、今日ではやや大人の読み物になりつつあるが、奇想天外なエピソードの連続がおもしろく、アニメーション映画化もされて広く受け入れられている。他にナンセンス詩集『スナーク狩り』(1876)、長編『シルヴィーとブルーノ』(1889)などのほか、数学の著作がある。
キング=スミス,ディック King-Smith, Dick(1922~2011)
 イギリスの児童文学作家。グロースター州生まれ。第二次大戦では将校として従軍、戦後は農業に従事。1975年教育学の学位を取って小学校教師になり、勤めながら執筆を始めて60歳で専業作家となる。農村を舞台にした愉快な動物物語が多く、ガーディアン賞を受賞した『子ブタ シープピッグ』(1983)は、子ブタが立派な牧羊「豚」になるまでをユーモアたっぷりに描き、映画化もされた。

グージ,エリザベス Goudge, Elizabeth(1900~1984)
 イギリスの作家。サマセット州生まれ。美術学校でデザインを学び、デザインの教師となる。子どもの頃から作家を志したが劇作では売れず、小説『魔法の島』(1934)などでロマンティックな作風の作家として英米で評判となる。子ども向けの作品のうち、カーネギー賞を受賞した『まぼろしの白馬』(1945)は、森に囲まれた館で暮らすことになった少女のスリルに満ちた物語で、ファンタジーの要素も持った印象深く美しい話である。
クーパー,スーザン Cooper, Susan(1935~  )
 アメリカの作家。イギリス生まれ。オックスフォード大学を卒業。アメリカ人と結婚し、アメリカで活動する。「サンデー・タイムズ」などの記者を務めながら作品を執筆。善と悪の戦いを描く<闇の戦い>五部作(1965~1977)は、アーサー王伝説をはじめイングランドやウェールズの伝承・風俗を様々に用いた、緻密な構成が見事なファンタジーである。2作目の『光の六つのしるし』(1973)でボストングローブ・ホーンブック賞を、4作目の『灰色の王』(1975)でニューベリー賞を受賞。大人向けのSF長編や絵本もある。
クラーク,ポーリン Clarke, Paurine(1921~2013)
 イギリスの児童文学作家。ノッティンガムシャー州生まれ。オックスフォード大学を卒業し、修士号を取得。子どもの雑誌の編集にたずさわり、のち子ども向けの作品を多数執筆。ブロンテきょうだいのものだった12人の木の兵隊とその秘密を守る少年を描いた『魔神と木の兵隊』(1962)は、背景が細かく書きこまれた楽しいファンタジーで、カーネギー賞を受賞。他に低学年向きの『少年警官ジェイムズくん』(1957)のシリーズや歴史物語などがある。
クリアリー,ベバリイ(ベバリー Cleary, Beverly Bunn(1916~  )
 アメリカの児童文学作家。オレゴン州マクミンヴィル生まれ。カリフォルニア大学卒業後、ワシントン大学付属の司書養成学校に学び、ワシントンのヤキマで児童図書館に勤務。結婚後、第二次大戦中は病院図書館で働く。処女作『がんばれヘンリーくん』(1950)に始まる<ゆかいなヘンリーくんシリーズ>以来、現代の普通の子どもたちの日常生活やちょっとした事件を愉快に生き生きと描いている。元気な女の子ラモーナが主人公の話も人気が高く、『ラモーナとおかあさん』(1979)では全米図書賞を受賞。他に思春期の少女の物語や、動物物語<子ねずみラルフ>シリーズなど多くの作品がある。1975年にはローラ・インガルス・ワイルダー賞を、日記と手紙で少年の心の変化をたどる『ヘンショーさんへの手紙』(1983)でニューベリー賞を受賞するなど数多くの賞を受賞している。
クーリッジ,スーザン Coolidge, Susan(1835~1907)
 アメリカの作家。本名サラ・チョーンシー・ウールジー。オハイオ州クリーブランド生まれ。インテリの裕福な家庭の長女として育ち、子どもの頃から詩や物語を書く。生涯独身で、36歳で処女作を出版後多くの作品を執筆。2作目の『ケティ物語』(1872)は自分の家族をモデルにした家庭小説で、現在では少々古くなったが、おてんばな少女が大けがを克服して優しい大人になっていく様子を明るく生き生きと描いており、続編も書かれ高い人気を得た。
グリーペ,マリア Gripe, Maria(1923~2007)
 スウェーデンの児童文学作家。ストックホルム郊外のヴァクスホルム生まれ。哲学や宗教史を学ぶ。1954年から作品を発表し始め、『森の少女ローエラ』(1963)、『夜のパパ』(1968)などで現代の子どもたちの生活や心理を巧みに描き、<北国の虹ものがたり>三部作(1961~66)の第2作『ヒューゴとジョセフィーン』(1962)ではニルス・ホルゲルソン賞を受賞。『忘れ川をこえた子どもたち』(1964)、『鳴りひびく鐘の時代に』(1965)のような北欧の伝説を下敷きにしたファンタジーや中世を舞台にした歴史物語もあり、静かだが力強く美しい物語となっている。1974年に国際アンデルセン大賞を受賞。
グリム,ヤーコプ Grimm, Jacob(1785~1863)/グリム,ヴィルヘルム Grimm, Wilhelm(1786~1859)
 ドイツの言語学者・民話研究家。ヘッセン州ハーナウ生まれ。マールブルク大学で法律学を学び、卒業後カッセルの図書館に勤務。民話を民族の財産とする考えに共鳴し、1807年頃から主として聞き取り調査による民話収集を開始、1812年に最初の民話集『子どもと家庭の昔話』を刊行。口承の民話を学問的研究の対象とし、採集した話をなるべく忠実に生かしながらも美しい言葉で表現して高く評価され、その後の民話研究・児童文学に大きな影響を与えた。1830年ゲッティンゲン大学に司書兼教授として招かれたが、1837年ハノーヴァー王の憲法違反への抗議に参加し免職となる。その後プロイセン王によってベルリンに招かれ、学士院会員・ベルリン大学教授となる。1961年になって完成した『ドイツ語辞典』の編集者としても著名。兄弟は経歴もほぼ同じで生活もともにすることが多かったが、兄の方が法律学・考古学までと広い分野に渡って研究を行い、政治にもしばしば関わるなどより活動的で、弟の方は文学的感性に富み、収集した民話を読みやすくまとめることに貢献した。残酷な面があるとの批判もあるが、豊かな題材と表現に満ち、「赤ずきん」「オオカミと七匹の子ヤギ」「いばら姫」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」「ブレーメンの音楽隊」など多くの話が今日まで広く親しまれている。
グリーン,ロジャー・ランスリン Green, Roger Lancelyn(1918~1987)
 イギリスの作家・評論家。ノーフォーク州生まれ。オックスフォード大学を卒業後、俳優や図書館員など様々な職業につきながら作品や評論を執筆。イギリスの児童文学の歴史や作家の研究書を著すほか、アーサー王やロビン・フッド伝説、北欧神話などの再話や編集も行っており、『アーサー王物語』(1953)などは長大な伝説がコンパクトにまとめられていて読みやすいものになっている。
グレアムグレーアム),ケネス Grahame, Kenneth(1859~1932)
 イギリスの作家。エジンバラ生まれ。オックスフォードのセント・エドワード・スクールを卒業後就職し、のちイングランド銀行に勤務。野山の散策を好んだほか、ロンドンの学者や芸術家のグループに参加して詩や随筆を執筆。40歳を過ぎて結婚し、まもなく生まれた一人息子に語った話から生まれた『たのしい川べ』(1908)は、幼少時の体験をもとにして、動物たちの生活する田園地帯や冒険好きなヒキガエルの引き起こす愉快な騒動などを情感豊かに描いている。素朴な味わいながら長く読みつがれており、1930年にはA.A.ミルンによって劇化された。
クレスウェル,ヘレン Cresswell, Helen(1934~2005)
 イギリスの児童文学作家。ノッティンガムシャー州生まれ。ロンドン大学を卒業後、教師、服飾のバイヤー、テレビ業界など様々な職業についたのち、作品の執筆を始める。ユーモアあふれる『村は大きなパイつくり』(1967)、家族の大切さについて考えさせられる『拝啓、心の先生』(1982)のほか、不思議で美しい味わいのある海にまつわる短編集『海からきた白い馬』など、ややインパクトに欠けるものもあるが、いろいろな種類の作品を描く。ゴースト・ファンタジー『幽霊の友だちをすくえ』(1987)はBBCのテレビ・シリーズになって親しまれている。
クローバー,シオドーラ Kroeber, Theodora(1897~1980)
 アメリカの作家。コロラド州生まれ。カリフォルニア大学卒業。1925年人類学者のアルフレッド・クローバーと結婚。夫の研究に協力し、その死後、石器時代のままの生活を営んでいたインディアンの部族ヤヒ族の最後の一人となった人物の一生を描いた『イシ-北米最後の野生インディアン』(1961)を著す。子ども向けの物語に再編した『イシ-二つの世界を生きたインディアンの物語』(1964)も、大変興味深く読みごたえがある。

ケストナー,エーリヒ Kästner, Erich(1899~1974)
 ドイツの作家・詩人。ドレスデン生まれ。師範学校へ進むが、卒業後は銀行に勤め第一次大戦に従軍。戦後ライプチヒ大学で文学、歴史、哲学を学び、在学中から文筆活動を始める。ライプチヒで新聞記者になるが、筆禍事件で解雇され、ベルリンに移って演劇の評論、ユーモラスな社会風刺の詩集や小説を発表。子ども向けの話としては最初の『エーミールと探偵たち』(1928)は、少年たちが協力して泥棒を捕まえる物語で、映画化もされ広く親しまれている。ナチス時代は出版を禁じられ身の危険もあったが、終戦直前までドイツに留まる。第二次大戦後新聞や雑誌に執筆したり、国際児童図書評議会の設立に尽力するなど各方面で活動する。1960年国際アンデルセン大賞を受賞。健全な正義感があり、子どもたちの活動を生き生きと描いている。他に中高生の少年たちの学園生活を描く『飛ぶ教室』(1933)、双子の少女が離婚した両親を和解させようと奮闘する『ふたりのロッテ』(1949)などがある。
ケラハー,ヴィクター(ビクター) Kelleher, Victor(1939~  )
 オーストラリアの作家。イギリスのロンドン生まれ。10代で南アフリカへ渡り、いくつかの大学で学ぶ。のちヨハネスブルグ、ニュージーランド、スコットランドの大学で教職につく。1976年にオーストラリアに移住、ニュー・イングランド大学の教授となる。1979年から大人向けや子ども向けのSFやファンタジーを出版。記憶を失った少年の興味深い謎解きの旅を描く『魔道師の杖』(1982)は、オーストラリア児童文学賞を受賞。趣味は陶器製造、キャンプ、釣、フォーク音楽の鑑賞など。
ケンダル,キャロル Kendall, Carol(1917~2012)
 アメリカの作家。オハイオ州生まれ。オハイオ大学を卒業後、大人向けのミステリーを執筆。小人のミニピン族が活躍する連作『かがやく剣の秘密』(1959)『ささやきの鐘の秘密』(1965)は、言葉遊びもあるユーモラスな軽い調子の物語ながら、侵略者と戦うという本格的なファンタジーでもあり、個人の尊厳や社会参加、生きることへの優しさを描いていると言われる。

呉 承恩 ゴ,ショウオン(1500~1581)
 中国の作家・文人。字は汝忠、号は斜陽山人。山陽(現・江蘇省淮安県)出身。若い頃から詩文に優れ博識で有名だったと言われるが、官吏登用試験にはなかなか合格せず、1560年60歳を過ぎてから長興県の県丞(長官の補佐役)になるが1566年には辞職。雑学の大家で民話や伝説を好み、多くの詩や読み物を著す。インドへ経典を求めに行く僧に従う石から生まれた猿の奇想天外な冒険物語『西遊記』は、晩年郷里に帰った後に作られたものと推定されるが、ユーモアと風刺に富んだ楽しい作品で、現代まで広く読みつがれていて、漫画や劇、映画にもなっている。
ゴッデン,ルーマー Godden, Rumer(1907~1998)
 イギリスの作家。サセックス州生まれ。幼年時代をインドで過ごし、家庭で教育を受ける。12歳で帰国するが、学校や生活になじめず苦労する。インドとイギリスを行き来し、1930年代からカルカッタでバレエ学校を開くかたわら執筆を行い、大人向けの小説『黒水仙』(1939)、『河』(1946)で高く評価され、ともに映画化される。子ども向けの本としての処女作『人形の家』(1947)以来、人形を主人公にしたいくつかの物語で人生の種々の問題を描き出している。平凡な主婦のちょっとした冒険(?)を描く『ねずみ女房』(1951)、移民の家政婦を喜ばせようとする子どもたちを描く『台所のマリアさま』(1967)、ジプシーとの混血の少女を描くウィットブレッド賞受賞の『ディダコイ』(1972)などは、環境への適応に苦労する人々の物語である。自らの経験を生かした『バレエダンサー』(1984)などのバレエものもある。いずれも細部までよく書きこまれ、優れた「物語」になっている。アンデルセンの伝記も手がける。
コッローディコルローディ),カルロ Collodi, Carlo(1826~1890)
 イタリアの児童文学作家。本名カルロ・ロレンツィーニ。フィレンツェ生まれ。神学校に進むが、卒業後は図書館に勤めて古典の研究を行う。イタリア統一運動に共鳴し、実戦に参加する一方、風刺新聞「街灯」「スカラムッチャ」などを発行してジャーナリスト・演劇評論家として活動する。1872年にぺローの翻訳を始めてから児童文学に興味を持ち、自らも作品を執筆。児童雑誌に連載した木彫りのあやつり人形の冒険物語『ピノッキオの冒険』(1883)は、イタリアの民話や伝統的な仮面劇・人形劇の伝統が生きている。児童文学を次代の国民の育成するものとして考えていたため教訓臭もあり、近年では身体障害への差別表現が問題となったりしたが、子どもの興味をとらえる躍動感にあふれた楽しい話である。
コルシュノウ(コルシュノフ),イリーナ Korschunow, Irina(1925~2013)
 ドイツの作家。亡命ロシア人を父として東ドイツ(当時)のシュテンダールに生まれる。第二次大戦後西ドイツ(当時)に移住。ジャーナリストとして新聞、テレビ、ラジオの仕事にたずさわる。1958年から幼児や低学年向けの作品を発表し始め、民間伝承をもとにしたファンタジー『緑の髪の小人バブッシェル』(1967)や動物物語などを出版。友人の死の真相を探る『だれが君を殺したのか』(1978)以降はティーンエイジャーや大人向けの作品も執筆。恋人との愛と自分の生き方に悩む少女(と夫から自立しようとする妻)を描く『ゼバスチアンからの電話』(1981)は、女性の自立、環境破壊、住宅問題、学校制度、性の問題など現代ドイツの社会の様々な問題を扱い共感を呼ぶ。
コールス,ダイアナ Coles, Diana
 イギリスの児童文学作家。オックスフォード大学を卒業後、パブの給仕やホテルの清掃係など様々な職業につきながら、シングルマザーとして息子を育てる。のちロンドン北部に住んで、ジュニアスクールで障害児教育に携わる。「自力で問題を解決する賢いお姫様」の物語『アリーテ姫の冒険』(1983)は、女性問題の観点から話題になったが、物語の作り方が未熟で作品としての出来は良くない。
ゴレモス,アレキ Goulimis, Alki
 ギリシアの児童文学作家。アテネ生まれ。大学卒業後児童文学を書き始め、絵本、SF、コラム、放送台本など幅広く執筆活動を行う。子ども時代を森に囲まれた地方で育ち、自然を題材とした作品を多く描いている。ギリシアの植物にまつわる伝説を織りこんだミステリー『金のゆりのひみつ』(1971)は、子どもたちの心の動きを生き生きと表現し、ギリシア最優秀児童文学賞を受賞。

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