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私的 児童文学作家事典〔海外編〕ハ行

2014年10月23日 鈴木朝子

バイアーズ(バイヤース),ベッツイ(ベッツィ Byars, Betsy(1928~  )
 アメリカの児童文学作家。ノース・カロライナ州シャーロット生まれ。クイーンズ大学を卒業後、結婚。雑誌や新聞に短編を発表していたが、自分の子の誕生後は子ども向けの物語の執筆を始め、野生動物と少年とのふれあいを描いた『黒ギツネと少年』(1968)などの作品を出版。現代の子どもたちの心や社会の問題を明るくユーモラスに描き出し、障害児の弟を持つ思春期の少女の心の揺れを描いた『白鳥の夏』(1970)は、ニューベリー賞を受賞。他の作品に、家族の問題を扱った『うちへ帰ろう』(1977)などがある。
ハイウォーター,ジュマーク Highwater, Jamake(1942~2001)
 アメリカの作家・評論家。アメリカ先住民の血を引いて生まれる。父親を交通事故で失い、白人の家族の養子となる。美術・音楽・舞踏の評論などの多くのノンフィクションの著作があるほか、講演やテレビなどを通じて先住民の文化を広く紹介する。小説作品に、先住民の伝説を取り入れた幻想的な美しい物語『アンパオ』(1977)、自伝的な要素を含んだ、先住民の女性の白人との葛藤の中での一代記<<幻の馬>物語>などがある。
パイル,ハワード Pyle, Howard(1853~1911)
 アメリカの作家・挿絵画家。デラウェア州ウィルミントン生まれ。フィラデルフィアの美術学校に学ぶ。1876年挿絵入り紀行文が雑誌に採用されたのを機にニューヨークへ出て、「ハーパー」や子ども向けの「セント・ニコラス」などの雑誌で小説や挿絵の仕事をする。調子の良い言葉づかいで、挿絵も自分で描いた民話や伝説の再話、歴史物語を多く著す。ロビン・フッド伝説を初めて一つにまとめたと言われる『ロビン・フッドのゆかいな冒険』(1883)や、<アーサー王物語>四部作などを発表。中世ドイツを舞台にした歴史物語『銀のうでのオットー』(1888)は、荒々しく素朴な時代の中の一人の少年をめぐる心に残る物語である。
バウアー,マリオン・デーン Bauer, Marion Dane(1938~  )
 アメリカの児童文学作家。イリノイ州生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを、オクラホマ大学で文学を学ぶ。家出して厳しい自然の中で自分を見つめ直す少女の物語『家出』(1976)の処女作以来、子どもたちに対して重い問題を真っ向から扱い、嘘をつくことの罪、約束を守ることの大切さ、命や平和の問題などを描いている。他に、ジェーン・アダムズ児童図書賞を受賞した『ヒロシマから帰った兄』(1983)、『トニーが消えた日』(1986)などの作品がある。執筆活動のかたわらミネアポリス児童図書協会で創作を教える。
ハウゲン,トールモー Haugen, Tormod(1945~2008)
 ノルウェーの児童文学作家。オスロ北東のトリシルに生まれる。オスロ大学で文学と美術を学ぶ。ムンク美術館に勤めたのち、専業作家となる。子どもの不安や悩みを詩的な短い文章で淡々と描き、連作『夜の鳥』(1975)『少年ヨアキム』(1979)では、一人の少年をめぐる両親や友人・知人との難しい人間関係を静かに描き出している。他の作品に、家出少年と関わることで成長していく過保護だった少女の物語『魔法のことばツェッペリン』(1976)などがある。1990年に国際アンデルセン大賞を受賞。
パウゼヴァング(パウゼバンク),グードルン Pausewang, Gudrun(1928~  )
 ドイツの作家。チェコ生まれ。第二次大戦後西ドイツ(当時)へ移住。チリ、ベネズエラなどのドイツ人学校で教師として働く。1972年からヘッセン州の小学校で教師を務めるかたわら作家活動を始め、南米での体験や、アウトサイダーや亡命者、平和問題などを扱った作品を執筆。チューリッヒ児童図書賞を受賞した『最後の子どもたち』(1983)と、ドイツ児童文学賞を受賞した『見えない雲』(1987)は、それぞれドイツでの原爆投下と原子力発電所の事故という現実的な恐ろしさを描いた警句的な近未来小説である。他の作品に、『うら庭の水の精』(1985)、『おじいちゃんは荷車にのって』(1988)などがある。
バウマン,ハンス Baumann, Hans(1914~1988)
 ドイツの作家・詩人。バイエルン州アンベルク生まれ。小学校教師を務めたのち、ベルリン大学で哲学を学ぶ。卒業後各地を旅行し、詩や戯曲を執筆。第二次大戦時はナチスの活動に参加し、のち厳しい批判を受ける。戦後は子ども向けの歴史小説やノンフィクションを多く著し、絵本や幼年向けの読み物、ロシアの子どもの本の翻訳・紹介も手がける。13世紀のモンゴルでのフビライと弟アリク・ブカの対立を描いた『草原の子ら』(1954)、第二次ポエニ戦争時のハンニバル軍に参加した象つかいの少年の物語『ハンニバルの象つかい』(1960)などの作品で、戦争の中の様々な人間の姿を刻明に描き出している。他に『コロンブスのむすこ』(1951)、『大昔の狩人の洞穴』(1953)などの作品がある。
バージェス,ソーントン・ワルドー Burgess, Thornton Waldo(1874~1965)
 アメリカの作家。マサチューセッツ州サンドウィッチ生まれ。幼いうちに父親をなくす。ボストンの商科大学を中退して靴屋に勤めたのち、フェルプス社の編集者になり、「グッド・ハウスキーピング」誌の編集などに携わる。1902年頃から雑誌に自然や動物のことを寄稿。息子に書き送ったお話をもとに動物物語集『西風かあさん』(1910)を出版、以後多くの動物物語を執筆し、日本でも『ふくろねずみのビリーおじさん』などの話が<バージェス アニマル・ブックス>として広く親しまれ、「山ねずみロッキーチャック」の題名でアニメや絵本にもなる。1938年ノースイースタン大学から文学博士号を授与された。
バジョーフ,パーヴェル・ペトローヴィチ Бажов, Павел Петрович(1879~1950)
 ソビエト時代のロシアの作家。ウラル地方の村に生まれる。ペルミ市の神学校を卒業後、教師をするかたわら、子どもの頃から親しんできたウラル地方の民話や伝説を採集。1918年の内戦に従軍、のち「農民新聞」の記者を務める。45歳のとき処女作『ウラル昔語り』(1924)を出版。映画やバレエになった「石の花」「銀のひづめ」などを収め、ソビエト国家賞を受賞した『くじゃく石の小箱』(1939)は、集めた民話・伝説をもとに、鉱山労働者や石細工職人などを登場させながら、自然の美しさや神秘を描いた幻想的な物語集である。日本版はその中から『石の花』では8編を、<バジョーフ・民話の本>シリーズでは23編を選んで訳したもの。他に、自伝的小説『みどりの小馬』(1939)などがある。
パターソン,キャサリン Paterson, Katherine(1932~  )
 アメリカの児童文学作家。中国生まれ。第二次大戦で帰国。大学を卒業後、小学校の教師となる。1957年から4年間宣教師の夫とともに日本に滞在し、帰国後日本の中世を舞台にした小説や、民話の絵本を発表。2人の養子を含む4人の子どもを育てる。その後子どもたちの心理や様々な家族の姿を、あるがままにしっかりと描いた作品を執筆。秘密の場所での友情を描いた『テラビシアにかける橋』(1977)、双子の姉妹の愛憎を描いた『海は知っていた』(1980)で、2回ニューベリー賞を受賞。その他の作品に、里親の間を転々とする激しい性格の少女の生き方と厳しい現実を描いて全米図書賞を受賞した『ガラスの家族』(1978)、スコット・オデール歴史小説賞を受賞した『北極星をめざして』(1996)などがある。1998年国際アンデルセン大賞を受賞。
ハッチ,メリー・C. Hatch, Mary Cottam(1912~1970)
 アメリカの児童文学作家。ソルトレーク・シティ生まれ。コロンビア大学で図書館学を学び、卒業後ニューヨークの公共図書館で児童図書館員として働き、図書館の新聞の編集も行う。貧乏な百姓のために金持ちから食べ物や金を持って来る鍋の愉快なお話「ものいうなべ」など、のんびりした明るく楽しいデンマークの昔話を再話した『デンマークの13の話』(1947)を出版。日本版の『ものいうなべ』はその中から8編を選んで訳したもの。
バーネット,フランセス(フランシス)・ホジソン Burnett, Frances Eliza Hodgson(1849~1924)
 アメリカの作家。イギリスのマンチェスター生まれ。幼いうちに父親を失い、1865年にアメリカへ移住。17歳のときから生活のために小説を書き始める。1873年に結婚して二人の子の母親となるが、のちに離婚。ヨーロッパ各地を旅行し、しばしばイギリスに滞在する。突然イギリス貴族の後継者になったアメリカ育ちの純真な少年が周囲の人心や状況を明るく変えていく『小公子』(1886)、貧しい境遇に落ちながらも気高い心を持ち続ける少女を描いた『小公女』(1905)、ひねくれて育った少女と少年が自然とのふれあいによって成長する『秘密の花園』(1911)の3作で、今日まで広く知られる。感傷的で通俗的との批判もあるが、その健全なわかりやすさが人の心を強くとらえる名作になっている。
バーババーバー),アントニア(アントーニャ) Barber, Antonia(1931~  )
 イギリスの児童文学作家。ロンドン生まれ。ロンドンのユニヴァーシティ・カレッジで文学を学ぶ。一時ニューヨークで暮らし、チェース・マンハッタン銀行で広報の仕事をする。イギリスからニューヨークに来た子どもたちが、巻き込まれた誘拐事件を解決するスリルあふれる物語『ロッカバイ・ベイビー誘拐事件』(1966)、イギリスの古い屋敷で幽霊になっていた100年前の子どもたちを助けるタイム・ファンタジーでもあるゴースト・ストーリー『幽霊』(1969)などの作品がある。趣味は乗馬、園芸。
バビット,ナタリー Babbitt, Natalie(1932~  )
 アメリカの児童文学作家。オハイオ州デイトン生まれ。マサチューセッツ州ノーサンプトンのスミス大学を卒業。詩人のサムエル・バビットと結婚し、三人の子の母親となる。いたずら好きで少々ドジな悪魔の物語集『悪魔の物語』(1974)は、挿絵も自分でつけた軽妙でユーモラスな連作で、続編『もう一つの悪魔の物語』(1987)もある。一方クリストファー賞を受賞した『時をさまようタック』(1975)は、不死になった一家の苦悩を描いた重いファンタジーである。創作のほか、詩集や絵本のイラストも手がけ、ニューヨーク州のカークランド大学で児童文学の創作とイラストの講師も務める。
ハミルトン,ヴァジニア Hamilton, Virginia(1936~2002)
 アメリカの児童文学作家。オハイオ州イエロー・スプリングス生まれ。アンティオーク大学、オハイオ州立大学で社会学を学ぶ。処女作『わたしは女王を見たのか』(1967)は、アメリカの黒人の心の誇りを描いた印象的な作品で、以後生まれ育った中西部を主な舞台にして、アフリカ系の黒人の生き方を中心に、現代のアメリカ人の様々な姿を魅力的に描き出す。山地で暮らす少年が外の世界に目を向けていく『偉大なるM.C.』(1974)は、ニューベリー賞、全米図書賞、ボストングローブ・ホーンブック賞を受賞。他の作品に、自伝的な『わたしはアリラ』(1977)、再度ボストングローブ・ホーンブック賞を受賞した『マイゴーストアンクル』(1982)、アフリカから語り継がれてきた民話を集めた『人間だって空を飛べる』(1985)などがある。1992年国際アンデルセン大賞、1995年ローラ・インガルス・ワイルダー賞を受賞。
ハムズン,マリー Hamsun, Marie(1881~1969)
 ノルウェーの児童文学作家。教師、舞台女優などの職についたのち、1909年に作家クヌート・ハムズンと結婚、以後は農場で暮らす。自分の子どもたちをモデルにして、4人の兄弟姉妹の農場での素朴な生活を明るく丁寧に描いた『村の子どもたち』(1924~32)を出版。日本版の『小さい牛追い』『牛追いの冬』はその中の第一部にあたる。他に、家族のその後を描いた続編や、詩集、回想記などがある。
バラージュ,ベラ Balázs, Béla(1884~1949)
 ハンガリーの作家。南部のセゲド生まれ。ブダペストの大学を卒業後、ベルリン、パリで学ぶ。新聞記者をしながら、詩・戯曲・小説を発表、映画評論家・監督としても活動する。第一次大戦後の共産主義政府に参加して、その崩壊後ドイツやソビエトで亡命生活を送り、第二次大戦後に帰国。貧しい少年が手にいれた魔法の絵の具をめぐる物語『ほんとうの空色』(1925)は、少年の成長を描いた色彩と空想の豊かな小品である。他に、歌劇台本『青ひげ公の城』(1911)、映画評論『視覚的人間』(1924)など多くの著作がある。
バリ,ジェイムズ・マシュー Barrie, James Matthew(1860~1937)
 イギリスの作家。スコットランドのキリミア生まれ。エジンバラ大学を卒業後、「ノッティンガム・ジャーナル」紙の記者を務める。1885年にロンドンへ出てフリーのジャーナリストとして活動しながら評論や小説の執筆を続け、故郷の町を描いた小説『スラムズの窓』(1889)などで認められる。その後劇作に力を入れ、『あっぱれクライトン』(1902)、『12ポンドの目つき』(1910)などの作品が上演され好評を博す。初めに小説『小さな白い鳥』(1902)の中に現れたピーター・パンの物語は、戯曲『ピーター・パン、大人になりたがらない少年』(1904初演、1928出版)として独立し、小説の形では『ケンジントン公園のピーター・パン』(1906)『ピーター・パンとウェンディ』(1911)がある。感傷的なところもあるが、子どもの生き生きとした姿を描いて、今日でも読まれ、上演されている。1913年に准男爵となる。セント・アンドルーズ大学、エジンバラ大学の学長となってそれぞれから法学博士号を、オックスフォード大学から文学博士号を授与される。
ハリス,ルース・エルウィン Harris, Ruth Elwin
 イギリスの作家。カナダで様々な仕事に携わったのち、結婚後しばらくインドに滞在。第二次大戦時に疎開した家をモデルにして、『丘の上のセーラ』(1986)に始まる四人姉妹をその隣人の家族を含めて描く長編小説<ヒルクレストの娘たち>を執筆。同じ時代・同じ出来事を4人の娘それぞれの視点から語り直す(ただし巻が進むにつれて描かれる時代が長くなっている)という独特の構成で、性格や考え方の違いなどを描き分けて興味深い心理小説にもなっている。
ハリス,ローズマリー Harris, Rosemary(1923~  )
 イギリスの作家。ロンドン生まれ。ロンドンのコートランド研究所工学科を卒業。赤十字の看護婦、絵画の復元師、「タイムズ」紙の児童書の書評者などを務めるかたわら、1956年から大人向けの小説の執筆を始める。ヤング・アダルト向けの作品も書き、大洪水のときの古代エジプトでの冒険の旅を描いて、カーネギー賞を受賞した『ノアの箱船に乗ったのは?』(1968)と、続編を含めた三部作を発表。他に、不安定な思春期の少年少女のもとで古い伝説がよみがえる微妙なファンタジー『遠い日の歌がきこえる』(1971)、東洋の民話を再話した作品などがある。
バルトス=ヘップナー,バルバラ Bartos-Höppner, Barbara(1923~  )
 ドイツの児童文学作家。シュレージエン(現・ポーランドのシレジア)地方に生まれる。第二次大戦後西ドイツ(当時)に移住。戦争と故郷の占領、追放という体験から、ソビエト(ロシア)という国と戦いの中の人間の心の問題を扱った、重厚な歴史物語の力作を執筆。16世紀のロシアのシベリア征服を、『コサック軍シベリアをゆく』(1959)ではまだ劣勢だったロシア側から、『急げ草原の王のもとへ』(1961)では敗れていくタタール側から描いている。1963年ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン賞第一位を獲得。各地の小学校での自作朗読、幼年向けの短編集の編集なども行う。
ハンセン,カーラ Hansen, Carle
 デンマークの児童文学作家。夫のヴィル・ハンセンが描いた小熊が主人公の漫画『ペッツィ』(1953)の文章を担当する。この作品がヨーロッパ各国の新聞に掲載され、単行本もベストセラーとなって広く知られる。以後、森の中を探険して友達を見つけるこうさぎのお話『こうさぎのぼうけん』(1968)など、挿絵も描く夫と合作の形でいくつかの物語を執筆する。
ハンター,モーリーモリー Hunter, Mollie(1922~  )
 イギリスの作家。エジンバラの東のイースト・ロシアン生まれ。母親はスコットランド人、父親はアイルランド人。14歳で父親をなくして学校をやめ、以後は図書館で独学しながら作家をめざす。無駄のない簡潔な文章で、スコットランドの民間伝承や歴史を題材にした物語を執筆。妖精と人間との争いを扱ったファンタジー『魔の山』(1972)、ローマ人の侵入に対するケルト人の戦いを描いてカーネギー賞を受賞した、読みごたえのある歴史物語『砦』(1974)などの作品がある。
ハント,アイリーン Hunt, Irene(1907~  )
 アメリカの作家。イリノイ州南部に生まれる。イリノイ大学とミネソタ大学を卒業し、コロラド大学の大学院で心理学を学ぶ。イリノイ州の公立中学やサウスダコタ大学でフランス語などを教える。価値のある古いものを好み、子どもたちとその中の人種問題や貧しい家庭環境などに関心を寄せながら作品を執筆。ニューベリー賞を受賞した『ジュリー』(1966)は、厳格なおばのもとで暮らす少女の成長を細やかに描いている。趣味は古い家具や調度品を磨くこと。
バーンフォードバンフォード),シーラ Burnford, Sheila(1918~1984)
 カナダの作家。イギリスのスコットランド生まれ。射撃や飛行機操縦に優れ、第二次大戦時は看護婦として海軍病院に勤め、病院車の運転も担当。1948年にカナダへ移住。「パンチ」誌や「グラスゴー・ヘラルド」紙などに詩やエッセイを寄稿。自分の飼犬と飼猫をモデルにした、2匹の犬と1匹の猫が飼い主を求めて困難な旅をする『三びき荒野を行く』(1961)は、ベストセラーとなってカナダ総督賞など多くの賞を受賞し、映画化もされた。他に、第二次大戦の中の1匹の犬とそれをめぐる人々の姿を印象深く描いた『ベル・リア』(1977)などの作品がある。

ピアス,フィリパ(フィリッパ Pearce, Philippa(1920~2006)
 イギリスの児童文学作家。ケンブリッジシャー州のグレート・シェルフォード生まれ。ケンブリッジ大学を卒業。情報局に勤めたのち、BBCで脚本家・プロデューサーを務め、その後オックスフォード大学出版局などで編集者として働く。結核の療養中に想像の楽しみに目覚め、緻密に構成された、情景と心理の描写がきめ細かい優れた作品を執筆。宝探しをする少年たちの冒険を描いた処女作『ハヤ号セイ川をいく』(1955)で評判になり、共に不自由さを感じていた少年と老女の心がふれあうタイム・ファンタジー『トムは真夜中の庭で』(1958)で、カーネギー賞を受賞。他に、犬を欲しがる少年の心理を見事に表した『まぼろしの小さい犬』(1962)、ウィットブレッド賞を受賞した『ペットねずみ大さわぎ』(1978)、父親の謎をさぐる少女の物語『サティン入江のなぞ』(1983)などの作品がある。
ピアソン,キット Pearson, Kit(1947~  )
 カナダの作家。大学・大学院で図書館学・児童文学を学ぶ。児童図書館員・教師を務めるかたわら子どもの本を執筆、のち専業作家となる。辛い家庭環境を抱えて本の世界に慰めを見出だしている少女の現実にファンタジーを絡めて描いた物語『丘の家、夢の家族』(1996)でカナダ総督賞を受賞。他にカナダ図書館協会賞を受賞した『床下の古い時計』(1987)などの作品がある。
ビアンコ,マージェリイ(マジョリー)(・ウィリアムズ Bianco, Margery Williams(1881~1944)
 イギリスの児童文学作家。ロンドン生まれ。子どもの頃から英米両国を行き来し、結婚後もヨーロッパ各地やアメリカで過ごす。子ども時代の思い出を生き生きと描き、本物になる人形のうさぎのお話「ビロードうさぎ」(1922)などの作品がある。他に、昔話の研究家と集めた美しいフィンランドの民話集『あるフィンランドの家からきいたお話』(1936)があり、日本版の『かぎのない箱』はその中から7編を選んで訳したもの。
‘BB’ ビービー(1905~1990)
 イギリスの作家・挿絵画家。本名D.J.ワトキンス=ピッチフォード。ノーサンプトン州生まれ。少年時代は病弱で、家庭で教育を受けながら自然に親しむ。王立美術学校に学び、のちパリに渡って美術の修業をする。ラグビー校で美術教師を務めるかたわら、自然を舞台にした物語や随筆を執筆し、ほとんどの作品に本名で挿絵をつける。『風のまにまに号の旅』(1957)に始まる<あなぐまビルのぼうけん>六部作は、イギリスの田園の中で個性豊かな動物たちが繰り広げるスリルあふれる冒険物語である。他の作品に、カーネギー賞を受賞した『灰色の小人たちと川の冒険』(1942)、少年の釣りへの情熱を描いた『少年と黒魔女の淵』(1974)などがある。
ヒメネス,ファン・ラモン Jiménez, Juan Ramón(1881~1958)
 スペインの詩人。アンダルシア地方のモゲール生まれ。セビーリャの大学で法律を学ぶ。19歳でマドリードに出、スペインの近代詩運動に参加して詩人として活動する。故郷の町で過ごした数年間を一頭のロバに語りかける形で淡々と綴った「子どものための」散文詩『プラテーロとわたし』(1914)は、静かで素朴な心に残る作品である。1916年にニューヨークで結婚。1936年に勃発したスペイン内戦により出国、以後アメリカや中南米で過ごす。1956年ノーベル文学賞を受賞。
ヒューズ,モニカ Hughes, Monica(1925~2003)
 カナダの児童文学作家。イギリスのリバプール生まれ。幼少期をエジプトで過ごす。第二次大戦中は海軍の気象部門の仕事に従事し、戦後デザイナー、銀行員として働く。1952年カナダに移住、オタワの国立研究所に技術者として勤務。結婚後、1971年頃から本格的に作家活動に入る。SFを中心に執筆し、他の恒星の惑星上での物語『イシスの燈台守』(1980、2000年にフェニックス賞を受賞)と、その続編でカナダ・カウンシル児童文学賞を受賞した『イシスの後見人』(1981)、寒冷になった地球での生活を描く『リングライズ リングセット』(1982)、カナダ・カウンシル児童文学賞とカナダ・ヤングアダルト・ブック賞を受賞した『闇に追われて』(1994)などの作品がある。
ヒューズ,リチャード Hughes, Richard(1900~1976)
 イギリスの作家・詩人。ウェールズ生まれ。オックスフォード大学を卒業。在学中から詩集や戯曲を発表し、卒業後は街頭絵描きなどをしながら世界各地を放浪する。海賊につかまった子どもたちの行動と心理を鋭く描き出した小説『ジャマイカの烈風』(1929)で広く知られる。一方子ども向けの作品としては、「まほうのレンズ」「なんにも無い」ほかの奇想天外な短いお話を収めた、友人の子どもたちへの語りから生まれた物語集『クモの宮殿』(1931)などがある。
ヒルディック,エドモンド・ウォレス Hildick, Edmund Wallace(1925~2001)
 イギリスの児童文学作家。ヨークシャー州生まれ。図書館員、自動車修理工などを経て、1950年から4年間中学校教師を務める。この頃から作品の執筆を始め、1950年短編でトム=ガロン賞を受賞。自らの経験を生かして、労働者階級の子どもたちを扱った作品を発表して注目される。元気な少年少女が身の回りのちょっとしたことを調べて回る『こちらマガーク探偵団』(1973)に始まる<マガーク少年探偵団>シリーズのほか、<幽霊探偵団>シリーズなど多くの作品がある。

ファージョン,エリナー Farjeon, Eleanor(1881~1965)
 イギリスの作家・詩人。ロンドン生まれ。学校教育は受けず、家庭で読書や兄弟との空想遊びにふける。1903年作家だった父親が亡くなり一時アメリカに渡るが、まもなく帰国。自然の中で素朴な生活を送りながら、ロバート・フロスト、エドワード・トマスら多くの詩人・作家と交流し、物語や詩や劇を執筆。語りの形式をとった民話風の創作物語が多く、生の喜びに満ちた詩情豊かなファンタジーの書き手として、イギリスのアンデルセンとも言われる。古い歌の遊戯をふまえた恋物語『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(1921)、ばあやが語って聞かせる形の物語集『年とったばあやのお話かご』(1931)、民話を題材にした『銀のシギ』(1953)『ガラスのくつ』(1955)などの作品がある。「月がほしいと王女さまが泣いた」「十円ぶん」などをおさめた自選短編集『ムギと王さま』(1955)で、1956年のカーネギー賞と国際アンデルセン大賞を受賞。
ファーマーペネロピ Farmer, Penelope(1939~  )
 イギリスの児童文学作家。ケント州生まれ。少女時代は病弱で、多くの時間をアーサー・ランサムの物語などを読んで過ごす。オックスフォード大学で歴史学を、ロンドン大学で社会学を学ぶ。ウェイトレスやベビーシッター、代用教員などを経験。学生のとき書いた短編が出版されたことから、子ども向けの本を執筆するようになる。奇妙な雰囲気に満ちたファンタジーを多く描き、謎の少年と空を飛ぶ『夏の小鳥たち』(1962)、夢の中で時間を越えて飛ぶ『冬の日のエマ』(1966)、40年前の少女と入れ替わってしまう『ある朝、シャーロットは…』(1969)の3連作のほか、別世界への入り口となる不思議なたんすをめぐる冒険を描く『骨の城』(1972)などの作品がある。
フェルプス,エセル・ジョンストン Phelps, Ethel Johnston
 アメリカの作家。ニューヨーク州生まれ。中世文学を学び、博士号を取得。15世紀に関する論文を数多く執筆するほか、ラジオドラマや演劇の脚本・演出を手がける。編著書に、「ボロずきんの冒険」「三人の強い女」などの、独立心に富み積極的に行動する、元気で賢い少女や女性たちが主人公となっている民話を集めた『ボロずきんの冒険』(1978)がある。日本版はその中から13話を選んで訳したもの。
ブッシュ,ヘレン Bush, Helen
 カナダの作家。ブリティッシュ・コロンビア州ケローナ生まれ。クィーンズ大学とトロント大学で地質学・鉱物学・古生物学を学ぶ。オンタリオ博物館で教育部門のスタッフを務めたのち、フリーランサーとなる。化石を研究するかたわら、雑誌や新聞に化石や古生物の記事を執筆するほか、ラジオの解説などを行う。作品に、19世紀のイギリスで少女が魚竜の化石を発見するまでを生き生きと描いた興味深い伝記物語『海辺のたから』(1964)がある。
プライス,スーザン Price, Susan(1955~  )
 イギリスの作家。子どもの頃からギリシャ神話や北欧神話などに親しむ。14歳で「デイリー・ミラー」紙の短編小説コンクールに入賞。博物館のガイド、皿洗いなど様々な仕事をしながら物語の執筆を続ける。カーネギー賞を受賞した『ゴースト・ドラム』(1987)は、厳しい北の国を舞台として、淡々と力強く物語られる伝説風のファンタジーである。他に、『オーディンとのろわれた語り部』(1986)、ガーディアン賞を受賞した『500年のトンネル』(1998)などの作品がある。
ブライトン,イーニッド(エニド) Bryton, Enid(1897~1968)
 イギリスの児童文学作家。ロンドン生まれ。幼い頃は音楽家をめざして、ピアノと声楽の勉強に励む。教育学と自然史を学び、教師として務めたのち、子どもの本のベストセラー作家となる。ストーリーはやや通俗的・類型的ながら子どもたちの姿はよく書けていて、生涯600作もの作品を執筆し、多くの国でも翻訳出版される。2組の兄妹が奇妙な小島をめぐる謎を探る『冒険の島』(1944)に始まる<冒険シリーズ>、人形の世界を描きテレビシリーズ化もされた<おもちゃの国のノディ>、学園もの<おちゃめなふたご><おてんばエリザベス>などの作品がある。
ブリッグズ,キャサリン・M. Briggs, Katharine Mary(1898~1980)
 イギリスの作家・民俗学者。ロンドン郊外のハムステッド生まれ。幼い頃から昔話や妖精物語に親しむ。オックスフォード大学で英文学を学び、ガールスカウトの指導者としてストーリーテリングや演劇活動を行う。第二次大戦時は空軍で働く。戦後オックスフォード大学に戻って民俗学の研究に努め、博士号を獲得。イギリスの民話・伝説を収集・分類した『英国民話事典』(1970~1971)、『妖精事典』(1976)などの著書がある。英国民俗学会の会長も務める。物語作品に、17世紀のイギリス中南部の屋敷を舞台に家つき妖精が魔女と戦う『妖精ディックのたたかい』(1955)、魔女の母親にねらわれる義理の姉妹を守ろうとする少女の物語『魔女とふたりのケイト』(1963)がある。
ブリッシェン,エドワード Blishen, Edward(1920~1996)
 イギリスの作家・評論家。30代末まで教師を務める。その後子どものための本の編集・評論に携わり、英米の現代児童文学作家の発言を集めた『とげのあるパラダイス』(1975)のほか、百科事典・詩集・年鑑の編集を手がける。レオン・ガーフィールドと共著でギリシア神話を再話した『ギリシア神話物語』(1970)『金色の影』(1973)という作品もあり、前者はカーネギー賞を受賞。他に、数巻に渡る自伝がある。
プリョイセン,アルフ Prøysen, Alf(1914~1970)
 ノルウェーの作家・詩人。ヘデマルク地方のリングサーケル生まれ。貧しい小作農民の子として、学校には行けず幼い頃から働く。豊かな空想力に恵まれ、歌や物語を作って、各地を歌ったり語ったりして回る。1945年に最初の作品集を出版。小説『電灯にとまったツグミ』(1949)は、劇・映画・ミュージカルにもなる。子ども向けの物語に、突然スプーンぐらいの大きさになってしまうおばさんの愉快な冒険を描く楽しい物語集『小さなスプーンおばさん』『スプーンおばさんのぼうけん』『スプーンおばさんのゆかいな旅』(1957~1967)などがあり、ラジオやテレビにもなって広く親しまれている。
ブリンズミード,ヘスバ・フェイ Brinsmead, Hesba Fay(1922~  )
 オーストラリアの児童文学作家。ニューサウスウェールズ州のブルー山脈地方に生まれる。12歳まで家庭と通信で教育を受け、シドニーの教師養成大学に進む。教師や演劇関係の仕事についたのち、ラジオ原稿の執筆を始め、40代になってからオーストラリアの現代の青少年の姿を描いたティーンエイジャー向けの都会的な小説を次々に発表。処女作『青さぎ牧場』(1964)は、人種問題を通して一人の少女が自己を確認するに至る物語で、オーストラリア児童文学賞を受賞。
ブルックナー,カルル(カール Bruckner, Karl(1906~1982)
 オーストリアの児童文学作家。ウィーン生まれ。小学校卒業後、錠前工など様々な職業を転々とし、28歳でブラジルに渡るが、2年後に帰国。体験談の執筆、古典のリライトなどを経て、第二次大戦後は子ども向けの物語を執筆、多くの賞を受賞。ノンフィクション的な作品『黄金のファラオ』(1957)は、エジプトのツタンカーメン王の墓の発掘に至る息詰まるドラマを描いている。他に、メキシコの第一次革命を扱った冒険物語『メキシコの嵐』(1949)、イタリアの家出少年を描いた『ジーノのあした』(1955)、広島の被爆少女を主人公にした『サダコは生きる』(1961)などの作品がある。
ブルフィンチ,トマス Bulfinch, Thomas(1796~1867)
 アメリカの作家。ボストン生まれ。ハーバード大学を卒業。教師を経て銀行員として働く。勤務のかたわら神話や伝説を研究し、読みやすい物語に書きかえて広く紹介する。ギリシア・ローマ神話などを再話した『空想の時代』(1955)、アーサー王伝説やシャルルマーニュ伝説を再話した『騎士道の時代』(1958)『中世のロマン伝説』(1963)などの著作がある。日本版の『ギリシア・ローマ神話』は『空想の時代』から神話篇を抜き出したもの。
プルマン,フィリップ Pullman, Philip(1946~  )
 イギリスの作家。ノリッジ生まれ。オックスフォード大学を卒業。中学校教師として勤めながら児童文学の執筆を始め、のち専業作家となる。冒険ファンタジー<ライラの冒険シリーズ>の1作目となる『黄金の羅針盤』(1995)でカーネギー賞・ガーディアン賞を受賞。宗教的な色合いは濃いものの、多くの異世界の状景や登場人物・生き物たちの魅力も大きくファンタジーの物語として読みごたえがある。3作目の『琥珀の望遠鏡』(2000)でウィットブレッド賞を受賞。他の作品に『時計はとまらない』(1996)、ビクトリア朝時代の女性を探偵役にしたミステリーのシリーズなどがある。
プロイスラー,オトフリート Preussler, Otfried(1923~2013)
 ドイツの児童文学作家。ライヒェンベルク(現・チェコのリベレツ)生まれ。第二次大戦でドイツ軍に入隊、5年間ソビエト軍の捕虜生活を送る。1949年から西ドイツ(当時)南部シュロスベルクで小学校教師をしながら創作を始める。1970年以降は作家活動に専念。愉快で楽しい作品をテンポ良く描き、気のいい魔女やかわいいお化けなどが主人公の『小さい水の精』(1956)『小さい魔女』(1957)『小さいおばけ』(1966)、盗賊とそれを追いかける少年たちが繰り広げる物語『大どろぼうホッツェンプロッツ』(1962)に始まる3連作などがある。また、ドイツ内のスラヴ系少数民族ヴェンド人の伝説をもとにした『クラバート』(1971)は、愛と自由を描いた味わい深いファンタジーとなっていて、ドイツ児童図書賞を受賞。
フロロフ,ワジム Фролов, Вадим(1918~1994)
 ロシアの作家。ゴーリキー生まれ。水路運輸大学を中退後、水夫・工員などの仕事をしたのち、教師となる。第二次大戦では従軍し、戦後レニングラード大学の新聞学科を卒業。新聞の編集、映画・演劇の批評やシナリオ、ルポルタージュの執筆などに携わる。家庭や恋愛の問題に悩むソビエト(当時)の現代の青少年の姿を鋭く描き出した処女作『愛について』(1966)は、劇や映画になり、多くの外国語に訳されアメリカの児童問題研究協会の名誉賞を受賞するなど大きな反響を呼んだ力作である。

ペイトン,K.M. Peyton, K.M.(1929~  )
 イギリスの作家。バーミンガム生まれ。19歳で処女作を出版。美術学校在学中駆け落ち結婚し、夫婦合作を含め本格的に小説を執筆し始める。馬や飛行機といったものを効果的に絡ませながら一人の女性の一代記をドラマチックに描いた『愛の旅だち』(1967)『雲のはて』(1969)『めぐりくる夏』(1969)の<フランバーズ屋敷の人びと>は、最初の3作でガーディアン賞を、2作目でカーネギー賞を受賞し、のち『愛ふたたび』(1981)を加えて四部作となる。自分の生き方を探る若者の姿を生き生きと描き出すことに優れ、他に、ピアニストをめざす青年の物語『卒業の夏』(1970)に始まる三部作、60年前の出来事を通じて自分の道を見出だす青年を描いた『バラの構図』(1972)などの作品がある。
ベイリー,キャロライン・シャーウィン(ベイレイ,キャロリン・S.) Bailey, Carolyn Sherwin(1875~1961)
 アメリカの児童文学作家。ニューヨーク州フーシック・フォール生まれ。コロンビア大学教育学部を卒業。教師、ソーシャルワーカー、編集者などの仕事に就いたのち、子ども向けの物語の執筆を始める。1936年結婚、夏場は夫の死後相続したりんご園の経営に携わる。木の実が頭のちょっと気取った人形の、森での暮らしとその思いがけない結末を描く『ミス・ヒッコリーと森のなかまたち』(1946)で、ニューベリー賞を受賞。
ベーカー,マイケル Baker, Michael(1938~  )
 イギリスの作家。ミドルセックス州ノースウッド生まれ。ロンドン大学を卒業。ロンドンの郵便局や弁護士事務所などに法律の専門家として勤める。1967年に結婚。いなくなった母親を探す少年の物語である処女作『黒岳と夏星の国』(1968)は、ウェールズの伝説をもとにした不思議な雰囲気に満ちたファンタジーである。趣味は旅行、鉄道、歴史、神話、音楽鑑賞など。
ヘルトリング,ペーター Härtling, Peter(1933~  )
 ドイツの作家・詩人。ザクセン州ケムニッツ(のち東ドイツのカール・マルクス・シュタット)生まれ。チェコに移住。第二次大戦後オーストリアを経て西ドイツ(当時)に戻る中、相次いで両親を失う。ギムナジウムを中退して工場で働いたのち、新聞記者や雑誌の編集者を務めるかたわら詩や小説を出版。専業作家となり、1970年頃からは子ども向けの作品を書き始める。障害児の心を見事に描いた『ヒルベルという子がいた』(1973)、老いを扱いドイツ児童図書賞を受賞した『おばあちゃん』(1975)など、決して楽しいばかりではない現実を簡潔にありのままに描き出すことに優れている。他に、初恋を描きチューリヒ児童図書賞を受賞した『ベンはアンナがすき』(1979)、戦後の混乱を描いた『ぼくは松葉杖のおじさんと会った』(1986)などの作品がある。
ペロー,シャルル Perrault, Charles(1628~1703)
 フランスの作家・詩人・評論家。パリ生まれ。リヨン大学で弁護士の資格を得、のち大蔵大臣コルベールに認められてルイ14世の宮廷に仕える。1671年アカデミー会員となる。1687年、現代(17世紀)は古典の時代より優れているとした詩を発表し、フランス文学界に「新旧論争」を巻き起こす。一方、当時サロンで流行していた民話を再話したコントの執筆を手がけ、韻文で「ろばの皮」など3編、散文で「長靴をはいたねこ」「サンドリヨン(シンデレラ)」「青ひげ」「親指小僧」など8編を発表し、『教訓つきの昔話集』(1697)として無署名で刊行。これらの話は、テンポのよい文章で民話の基本の型を守りながら、具体的な描写で当時の生活を盛りこんで脚色し、子どもたちを含め広く受け入れられ、今日まで読まれている。
ベンマン,ハンス Bemmann, Hans(1922~  )
 ドイツの作家。グロイチュ生まれ。医学を志すが、第二次大戦での兵役をはさんだのち、戦後はオーストリアの大学で音楽学とゲルマン学を学ぶ。教会関係の図書館の司書や編集の仕事をするほか、大学で音楽史と児童文学を教え、イギリス児童文学の翻訳も手がける。ハンス・マルティンソンの筆名で1960年代に2冊の小説を出版。20年の間を置いて、架空の世界でのとある不思議な石と笛を巡る一人の少年の成長物語、一人の男の一代記となる、味わい深く読みごたえのあるメルヘン・ロマン『石と笛』(1983)を発表。その他の作品に、架空の国での言語の問題を扱った不思議な小説『鏡の中の言葉』(1984)などがある。

ホイクホイック),ジクリト Heuck, Sigrid(1932~  )
 ドイツの作家・絵本作家。ケルン生まれ。バイエルン地方で育つ。グラフィック・デザインを学び、1950年代から絵本作家として活動する。1970年代から読み物も書き始め、アメリカの開拓時代の連作、馬や戦争を題材にした作品を発表。1980年代以降は、探検好きな父親に連れられてアマゾンを訪れた少女の体験を描いた冒険物語『月の狩人』(1983)、アフリカやアラビアを舞台とした二重構造の物語『砂漠の宝』(1987)など、エキゾチックで神秘的な雰囲気を持つ作品も手がけている。
ホーウッドホアウッド),ウィリアム Horwood, William(1944~  )
 イギリスの作家。オックスフォード生まれ。ブリストル大学を卒業。10年間ロンドンで「デーリー・メール」紙の編集者として働いたのち、1978年から専業作家となる。モグラの世界の愛と闘いを描いた優れた動物ファンタジー『ダンクトンの森』(1980米)で、高く評価される。他に、ケネス・グレアムの『たのしい川べ』の続編『川べにこがらし』(1993)『川べに恋風』(1995)、大人向けの作品に、障害者の心とコンピュータの世界を描く『スカヤグリーグ』(1987)などがある。
ボウマン,ジェイムズ・C. Bowman, James Cloyd(1880~1961)
 アメリカの民話研究家。オハイオ州リープシック生まれ。オハイオ・ノーザン大学、ハーバード大学を卒業。アイオワ州やミシガン州の大学で英語を教える。イギリスの児童文学作家マージェリイ・ビアンコとフィンランドの民話を集め、美しい民話集『あるフィンランドの家からきいたお話』(1936)などを出版する。日本版の『かぎのない箱』はその中から7編を選んで訳したもの。他の子ども向けの作品に『史上最高のカウボーイ』(1937)などがある。
ホガード,エリック・C. Haugaard, Erik Christian(1923~  )
 デンマークの作家。コペンハーゲン生まれ。農民として働いていたが、17歳で渡米、のちカナダを経て、アイルランドに移住。第二次大戦時はパイロットとして従軍、イタリアに赴く。アメリカ、イギリス、日本を含め世界各地を舞台にして、戦争、愛、自由などを扱った物語を平易な文章で描いている。バイキングの少年と奴隷だった少女の物語『バイキングのハーコン』(1963)『どれい少女ヘルガ』(1965)の連作のほか、ボストングローブ・ホーンブック賞、ジェーン・アダムズ児童図書賞を受賞した、イタリアの戦災孤児の物語『小さな魚』(1967)、1988年フェニックス賞を受賞した、ユダヤ人のローマへの抵抗を描いた『さいごのとりでマサダ』(1968)などの作品がある。他に、劇作やデンマーク語での詩作、アンデルセンの英訳なども行う。
ボストン,ルーシー(ルーシイ)・マリア Boston, Lucy Maria(1892~1990)
 イギリスの作家。ランカシャー州サウスポート生まれ。オックスフォード大学に学び、第一次大戦時はフランスで看護婦を務める。イギリスで最古の住宅といわれるマナー・ハウスに住み、その家をモデルにした古い屋敷をめぐる物語の連作<グリーン・ノウ物語>を執筆する。過去の子どもたちとの微妙なふれあいを描く『グリーン・ノウの子どもたち』(1954)、少年と迷い込んできたゴリラとの交流を描きカーネギー賞を受賞した『グリーン・ノウのお客さま』(1961)、屋敷をのっとろうとする現代の魔女と戦う『グリーン・ノウの魔女』(1964)などの作品で、生きることの意義を豊かな空想力で描き出している。他の作品に、刈り込まれた植木の城の世界を描く『みどりの魔法の城』(1965)、海の美しさと不思議を描いた『海のたまご』(1967)、自伝『意地っぱりのおばかさん』(1979)などがある。バラの古代種の栽培、刺繍などにも優れる。
ポーター,エレナエリナー Porter, Eleanor Hodgman(1863~1920)
 アメリカの作家。ニュー・ハンプシャー州リトルトン生まれ。病弱で高校を中退、健康を回復後、ニュー・イングランド音楽院を卒業。結婚後10数年たってから執筆活動を始め、ロマンス小説などを発表する。「喜びの遊び」で周囲の人々を明るく幸せにしていく孤児の少女の物語『少女パレアナ』(1913)『パレアナの青春』(1915)は、多くの人の心をとらえる忘れがたい印象を残す作品である。「パレアナ」は喜びを意味する普通名詞として辞書にも載り、他の作家により多くの続編が書かれている。他の作品に、『スウ姉さん』(1921)などがある。
ポータージーン Porter, Gene Stratton(1863~1924)
 アメリカの作家。インディアナ州生まれ。1886年に結婚。鳥の研究に打ち込み、野外生活に関する雑誌に寄稿したり雑誌の写真の編集に携わったりする。近郊の森を舞台にして、孤児の少年が森の番人をして働きながら幸せをつかむ『そばかすの少年』(1904)、少女が集めた蛾を売って学資をかせごうと奮闘する『リンバロストの乙女』(1909)の連作は、自然の中での印象深い人々の物語である。小説のほか、鳥の研究の著作がある。
ホッジズホッジス),C.ウォルター Hodges, Cyril Walter(1909~2004)
 イギリスの児童文学作家・挿絵画家・舞台美術家。ケント州生まれ。ゴールドスミス美術大学を卒業。劇場の舞台装置や衣装・広告のデザインに携わり、壁画や雑誌・物語の挿絵も手がける。第二次大戦中はカムフラージュの仕事で軍に協力。自ら挿絵をつけた物語も執筆し、ユーモラスな空想物語『空とぶ家』(1947)のほか、デーン人とサクソン人の戦いの時代を描いた、読みごたえのある骨太な歴史物語の連作『アルフレッド王の戦い』(1964)『アルフレッド王の勝利』(1967)などの作品がある。『シェイクスピアの劇場』(1964)でケイト・グリーナウェイ賞を受賞。
ボーデン,ニーナ Bawden, Nina(1925~ )
 イギリスの作家。オックスフォード大学を卒業。都市計画や教育映画などの仕事に携わる。1952年処女作を発表、1963年以降は子ども向けの冒険物語なども執筆。第二次大戦中の疎開してきた少女の生活と心情を細やかに描いた『帰ってきたキャリー』(1973)は、BBCでテレビ映画化され、1993年フェニックス賞を受賞。続編に、独裁国家への反乱に巻き込まれそうになる少女の物語『砦の町の秘密の反乱』(1978)がある。他の作品に、ペットの子豚との交流を描き、ガーディアン賞を受賞した『ペパーミント・ピッグのジョニー』(1975)などがある。
ホーバン,ラッセル Hoban, Russell Conwell(1925~2011)
 アメリカの作家。ペンシルベニア州ランズデイル生まれ。大学を中退後フィラデルフィア博物館工芸美術学校で学ぶ。第二次大戦中は従軍しイタリアに出征。1944年に結婚するが1975年に離婚、のち再婚。1969年にイギリスに移住。戦後イラストレーター、アートディレクター、コピーライターなどの仕事をしながら、絵本や物語の執筆を始める。絵本(文章)では子どもの心理をユーモラスに生き生きと描いた『おやすみなさいフランシス』(1960)『ジャムつきパンとフランシス』(1964)のシリーズ、ウィットブレッド賞を受賞した『さすがのナジョーク船長もトムには手も足もでなかったこと』(1974)、物語ではゼンマイじかけのおもちゃのネズミの親子が幸せを求めて旅をする『親子ネズミの冒険』(1967)などがある。1970年代からは複雑な構成の大人向けの幻想小説も発表する。
ボームバウム),ライマン・フランク Baum, Lyman Frank(1856~1919)
 アメリカの作家。ニューヨーク州チトナンゴ生まれ。病弱で、シラキュースの邸宅で家庭教師に教育を受ける。新聞記者、雑誌の編集者、劇場支配人、雑貨店の経営者、セールスマンなど様々な仕事に従事し、切手収集や養鶏の本も執筆。子ども向けの作品として出した童謡集の好評を受けて、自分の子どもたちに語って聞かせたファンタジー冒険物語を『オズの魔法使い』(1900)として出版。低い評価しかしない向きもあるが、子どもたちには大変喜ばれ、色鮮やかな風物や奇想天外な登場人物など、アメリカ的な明るく楽しい現代のおとぎ話として今日まで読み継がれている。1902年には自らの脚本でミュージカルになり、その後も何度か映画化された。ファンの要望を受けて多くの続編が書かれ、本人の手になるものが『オズのオズマ姫』(1907)など13作、他の人々によるものが26作あり、<オズ・シリーズ>は全40作となっている。
ボーモン,ジャンヌ・マリー・ルプランス・ド Beaumont, Jeanne-Marie Leprince de(1711~1780)
 フランスの作家。ルーアン生まれ。結婚後一時イギリスへ渡り、のち再婚。6人の子どもたちを育てながら教育事業に携わり、ロンドンの新聞に民話をもとにした物語や歴史・伝記・地理などの知識を子どもたちに教えるための作品を執筆。その中の『美女と野獣』(1756)などは簡潔で美しい文体の物語である。フランスで初めて子ども向けの読み物の雑誌を作り、他にも多くの著作がある。
ポールセン,ゲイリー Paulsen, Gary(1939~  )
 アメリカの作家。ミネソタ州生まれ。エンジニア、編集者、俳優、農夫、トラック運転手、猟師など多くの職業を経たのち作家となる。戦争の非人間的な面、少数民族、自然と調和した生き方などを取り上げた作品が多い。自らの体験も盛り込まれた『ひとりぼっちの不時着』(1987)は、カナダの森林に不時着し、たった一人で生き抜いていく少年がサバイバル体験を通して成長していく様を描いたリアルな物語である。他の作品に『はてしなき追跡』(1984)、『さまざまな出発』(1986)などがある。
ホルムイエンス・K. Holm, Jens K.
 デンマークの作家。『探偵キムと仲間たち』(1971)に始まる、4人の少年少女が町に起こる事件を次々に解決していく<探偵キム・シリーズ>は、スリルあふれる冒険と友情を描いた連作ミステリーである。スウェーデンやノルウェーなどの他の北欧の国々のほか、多くの国で訳され広く親しまれている。
ホワイト,アン・H. White, Anne Hitchcock(1902~1970)
 アメリカの児童文学作家。ミズーリ州セントルイス生まれ。犬や馬などの動物のほか書くことが好きで、11歳の頃から物語を書き始める。女優や演出家など10年程劇場関係の仕事に従事する。1945年頃からフリーランスのライターになり、動物とその家族の楽しい物語などを執筆する。作品に、いろいろなことができる不思議な猫が活躍する『へんなネコのセラピナ』(1951)、愉快な犬の物語『ジャンケットがんばる』(1955)などがある。
ホワイト,エルウィン・ブルックス White, Elwyn Brooks(1899~1985)
 アメリカの作家。ニューヨーク州マウント・ヴァーノン生まれ。コーネル大学を卒業後、各地を旅行し様々な職に就く。1926年から「ニューヨーカー」誌の編集者となり、ユーモラスに社会を風刺したエッセイや詩の執筆も行う。子豚とクモとの友情の物語『シャーロットのおくりもの』(1952)は、人生や生と死の問題を考えさせる印象深い作品で、映画化もされた。他の子ども向けの作品として、『ちびっこスチュアート』(1945)、『白鳥のトランペット』(1970)がある。1970年ローラ・インガルス・ワイルダー賞を受賞。
ボンゼルス,ワルデマル Bonsels, Waldemar(1881~1952)
 ドイツの作家・詩人。ハンブルク郊外のアーレンスブルク生まれ。高校生のとき家を飛び出して世界各地を放浪し、様々な職に就く。25歳で処女作を発表、多くの小説・旅行記・劇・詩などを執筆し、当時非常によく読まれる。1匹のミツバチの少女の冒険物語『みつばちマーヤの冒険』(1912)は、自然の美しさとともに擬人化した昆虫の世界を生き生きと描いた物語で、世界的なベストセラーになり映画化もされた。他に、『天国の民』(1914)などの作品がある。
ボンド,マイケル Bond, Michael(1926~  )
 イギリスの作家。バークシャー州ニューベリー生まれ。1942年軍隊に入り、航空部隊・陸軍の隊員として世界各地へ赴く。エジプトに勤務中に短編や論文を雑誌に発表し始める。戦後退役して結婚、BBCのカメラマンとして務めるかたわら、ラジオやテレビドラマの脚本・短編の執筆を続け、1965年から専業作家となる。子ども向けの作品には、『くまのパディントン』(1958)に始まる好奇心旺盛なクマの子が騒動を巻き起こす連作があり、幼児のような無邪気な失敗とそれを暖かく見守る周囲の人々を描いた楽しい物語である。ユーモアあふれる動物物語の作品が多く、他に、モルモットが主人公の<オルガ・ダ・ポルガ物語>(1971)などがある。

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