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私的 児童文学作家事典〔海外編〕ア行

2014年9月6日 鈴木朝子

アウル,ジーン Auel, Jean M.(1936~  )
 フィンランド系のアメリカの作家。シカゴ生まれ。18歳で結婚して五人の子の母親となったあと、28歳でエレクトロニクス会社に就職。40歳で退職して小説を書き始める。先史時代のクロマニヨン人の女性エイラの一代記<始源への旅立ち> (六部作予定)の第1作『大地の子エイラ』(1980)を処女作として出版、ベストセラーとなり映画化もされた。紀元前3万年頃の人類の生活が、調査・研究で得た莫大な知識と豊富な想像力によって、細かく描かれ興味深い。性や差別といった問題が盛り込まれているところは、先史時代を扱っていても「現代」の小説であることを感じさせる。2作目以降も順次刊行され、波瀾万丈(で少々ハーレクイン的)な大河ロマンスとしておもしろく読める。
アスビョルンセン,ペテル・クリステン Asbjørnsen, Peter Christen(1812~1885)
 ノルウェーの民話研究家・動物学者。クリスチャニア(現在のオスロ)生まれ。フィヨルドで自然科学の学術調査に携わる。1830年代から、学生時代からの友人ヨルゲン・モオとともに民話の収集を始め、ノルウェー初の民話集『ノルウェー民話集』(1842)を刊行。その後もモオとの共編や独力でいくつかの民話・伝説集を発表。日本版の『太陽の東 月の西』はそれらの中から18編を選んで訳したもの。構成もすぐれ、言語的にも長くデンマークの支配下にあったノルウェーに自国の文化を再認識させる役割を果たしたと言われる。グリムなどでなじみの話が少し違う形になっているのも興味深い。
アダムズアダムス),リチャード Adams, Richard(1920~  )
 イギリスの作家。バークシャー州生まれ。オックスフォード大学で歴史を学び、第二次大戦で従軍後、環境庁の公務員となる。52歳のときの処女作『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』(1972)はうさぎたちが新天地を求める冒険物語で、ベストセラーとなりカーネギー賞・ガーディアン賞を受賞し、のちアニメーション映画化もされた。政治的指導者や社会集団の問題、キリスト教精神、自然への愛情などが寓意的に描かれているとされるが、擬人的でないうさぎたちの習性や行動の部分がおもしろく、単なる教訓的な話ではなく動物ファンタジーとしてすぐれた作品となっている。1974年に退職して専業作家となる。他の作品に、神の化身とされた熊を描く『シャーディック』(1974)、動物生態研究所から逃げ出した実験用の犬たちを描く『疫病犬と呼ばれて』(1977)などのほか、自然観察図鑑の『四季の自然』『昼と夜の自然』などがある。
アドラー,キャロル・S. Adler, Carole S.(1932~  )
 アメリカの児童文学作家。ニューヨーク生まれ。大学終了後結婚して、会社勤めをしながら子育てをするが、のち退職。短編を少しずつ雑誌に発表していたが、教師になり、大学に入り直して教育学の修士号を取得。40代で専業作家となる。両親の離婚に直面する少女を描く『銀の馬車』(1979)をはじめ、自分自身や家族についての悩みや死といった問題を乗り越えて少年少女が成長する物語を書き、多数の賞を受賞。現代の子どもたちの重い現実を描くが、話のまとめ方はうまい。
アトリー,アリスン Uttley, Alison(1884~1976)
 イギリスの作家。本名アリス・ジェーン・アトリー。ダービーシャー州のクロムフィールドの農場で生まれる。マンチェスター大学で物理学を学び、卒業後結婚。1920年代から子ども向けの物語を雑誌などに発表し始め、1930年の夫の没後、ロンドンの女子校で理科の教師を務めながら執筆を続ける。『チム・ラビットのぼうけん』(1937)をはじめ、<サム・ピッグ><こぎつねルーファス><グレイ・ラビット>など、田園の小動物をユーモラスに生き生きと描いた幼年向けの物語を多数発表。また、唯一のジュニア小説と言える『時の旅人』(1939)は、古い農場を舞台に16世紀と現代を行き来する少女を描いた本格的なタイム・ファンタジーで、哀感のこもった美しく緻密な物語になっている。大人向けに田園生活の魅力をつづった作品もある。1970年マンチェスター大学から名誉文学博士号を授与された。
アーノルド,エリオット Arnold, Elliott(1912~1980)
 アメリカのジャーナリスト・作家。ニューヨーク生まれ。17歳でブルックリン・タイムズの記者となり、のちワールド・テレグラム社に移籍。第二次大戦では空軍に従軍、青銅星章を得る。18世紀のアメリカで先住民に育てられた白人少年の生き方を描いた『白いタカ』(1955)は、アメリカ先住民の内部から見た歴史小説としてすぐれている。ほかにも多くの作品を書き、小説『血兄弟』は『折れた矢』の題で映画化され評判になった。
アーモンド,デイヴィッド Almond, David(1954~  )
 イギリスの作家。イングランド北部のタイン川沿いの町に生まれる。教師など様々な職業につくかたわら小説、詩、芝居の台本などを執筆。1982年から専業作家となる。初めての長編となる子ども向けの作品『肩胛骨は翼のなごり』(1998)は、一人の少年がやや風変わりな少女とともに出会う不思議な「男」を巡る、決して「美しく」はないのに不思議な「美しさ」を感じられる微妙な味わいのファンタジーで、カーネギー賞とウィットブレッド賞を受賞。他の作品に『闇の底のシルキー』(1999)、『ヘヴンアイズ』(2000)などがある。2010年国際アンデルセン大賞を受賞。
アラン,メイベル・エスター Allan, Mabel Esther(1915~1998)
 イギリスの児童文学作家。チェシャー州ウォラシー生まれ。白内障でのちに失明したが、30歳のとき手術で視力を回復。以後本名のほかにジーン・エストリル、プリシラ・ハーゴン、アン・ピルグリムの筆名を使いながら少女向けのミステリー、ロマンス、バレエ物語など多数の本を執筆。ジーン・エストリル名義では<ドリーナ バレエシリーズ>がある。1970年代からは社会性を持った問題を扱うようになり、『青い海の歌』(1972)では孤島の過疎を描いている。盲目を脱した少女の父親からの自立を描く自伝的な作品『緑の指の見えた日』(1977)では、強い意志を保つ主人公の姿が印象的である。趣味は旅行、バレエ鑑賞。
アリグザンダー,ロイド Alexander, Lloyd(1924~2007)
 アメリカの作家。フィラデルフィア生まれ。子どもの頃から神話・伝説を愛読していたが、第二次大戦で大学を中退し、軍隊の下士官として訪れたウェールズの伝説に興味を抱く。結婚後、サルトルの翻訳や漫画家・編集助手などをしながら大人向けの本や子ども向けの本を執筆。ウェールズの伝説をもとにしたファンタジー <プリデイン物語>五部作(1964~1968)は、善と悪の戦いの中で自己を探究する少年を描き、5作目の『タラン・新しき王者』(1968)でニューベリー賞を受賞。人間にとって重要なのは出自ではないとするところにアメリカの作品であることが感じられる。ユーモアと明るさ・軽さがあるのと同時に、荒削りでドライな面があるところもアメリカ的である。18世紀を舞台にしたユーモア作品『セバスチァンの大失敗』(1970)では全米図書賞(児童図書部門)を受賞。趣味は猫と音楽で、バイオリン演奏が得意。
アンデルセン(アナセン),ハンス・クリスチャン Andersen, Hans Christian(1805~1875)
 デンマークの作家・詩人。「児童文学の父」と言われる。オーデンセの貧しい靴屋の家に生まれ、父親は早くに他界、母親も貧しさの中で亡くなった。1819年コペンハーゲンに出て、志した俳優業には失敗するが、奨学金を得てラテン語学校、コペンハーゲン大学に学ぶ。1829年に処女小説を自費出版。1835年イタリア紀行と自伝をもとにした小説『即興詩人』を出版、出世作となる。同年最初の童話集を刊行、初めは童話への理解が少なく不評だったが、次第に好評を得るようになる。各地を旅行し、多くの恋愛詩や戯曲も執筆した。作品には自伝的要素とキリスト教信仰がこめられたものが多く、愛や郷愁、支配階級への批判などが描かれている。「おやゆび姫」「皇帝の新しい着物(はだかの王様)」「みにくいアヒルの子」「人魚姫」「マッチ売りの少女」「赤いくつ」「雪の女王」などの、150編以上の物語は豊かな想像力に満ちているが、ややセンチメンタルなところもある。今日まで様々な翻訳が出ただけでなく、アニメーション・ミュージカル等の題材にもなり続けている。他の作品に『絵のない絵本』(1839)などがある。

イーザウ,ラルフ Isau, Ralf(1956~  )
 ドイツの作家。ベルリン生まれ。コンピュータのソフトウェア設計の仕事のかたわらファンタジー小説を執筆。ミヒャエル・エンデに認められ、作家として活動を始める。少年が旅の中で様々な体験を経て成長していく別世界ファンタジー『ヨナタンと伝説の杖』(1995)に始まる<ネシャン・サーガ>三部作で長編デビュー。宗教色が色濃くやや構成の荒さもあるが、読ませるスケールの大きい作品を描いている。他にブックステフーダー賞を受賞した『盗まれた記憶の博物館』(1997)、<暁の円卓>シリーズなどの作品がある。エンデの『はてしない物語』の続編のプロジェクトに参加し、『ファンタージエン 秘密の図書館』(2003)を出版。
イソップ(アイソーポス) ÆsopAisōposΑισωπος
 古代ギリシアの寓話作家。「寓話の父」と言われる。紀元前6世紀初めトラキアに生まれ、のちサモス島で奴隷となり、解放されたあとは寓話の語り手として諸国を巡ったが、前550年代にデルフォイで罪を着せられ殺されたと言われている。イソップが語ったとされる寓話は、前4世紀頃から様々な形でまとめられてきたが、「ウサギとカメ」「セミとアリ(アリとキリギリス)」「北風と太陽」などの最後に教訓のついたごく短い話が400編程伝えられている。動物が主人公の話が多く、なじみやすい。古臭く教訓的過ぎる感じのものもあるが、今日でも納得できる普遍的なものもある。日本には16世紀の末頃に伝わり、現在まで様々な翻訳が出たほか、長めの物語として再話されたものも多い。

ウィーダ Ouida(1839~1908)
 イギリスの作家。本名マリ・ルイーズ・ド・ラ・ラメー。フランス人を父に、イギリス東部のベリ・セント・エドマンズに生まれる。のちイタリアに移住、その地で没する。子どもの頃から動植物に親しみ、生涯独身で犬や猫と暮らした。20歳頃から小説を書き始め、メロドラマ風のロマンスを多数執筆。『二つの国旗の下に』(1867)は映画化もされた。ベルギーのアントワープ付近を舞台にした『フランダースの犬』(1872)は、絵の好きな貧しい少年と飼犬との悲話で、日本では早くから紹介され感動的な名作として近年にもアニメーションになるなどした。感傷的で今日の基準では表現がいささかまわりくどいが、人々や社会への鋭い批評を含んでいる。
ウィリアムズ,アーシュラ・モレイ Williams, Ursula Moray(1911~2006)
 イギリスの児童文学作家。ハンプシャー州ピータースフィールドで双子のきょうだいの一人として生まれる。大きな屋敷で家庭教師の教育を受けて育つ。16歳のとき一年間フランスに滞在、帰国後絵を学ぶ。子どもの頃から創作を始め、結婚後も子育てをしながら多くの作品を執筆。作り主のおじいさんのために小さな木馬が頑張る『木馬のぼうけん旅行』(1938)などユーモラスな楽しい話を描く。
ウェストール,ロバート Westall, Robert(1929~1993)
 イギリスの児童文学作家。ノーサンバーランド州タインマス生まれ。ダラム大学、ロンドン大学卒業。在学中に従軍。グラマー・スクールで美術教師をしながら作品を執筆。カーネギー賞を受賞した処女作『“機関銃要塞”の少年たち』(1975)は、空襲にさらされる第二次大戦下のイギリスの港町を舞台として、決して優等生ではない等身大の少年少女の世界がリアルに描かれ興味深い。母親の再婚に揺れる少年を描いたサイコ・ホラー『かかし』(1981)で再度カーネギー賞を受賞。戦争を扱った話やホラー、スリラーを得意とし、批評家だけでなく読者である子どもたちからも高い評価を受けている。他の作品に、ガーディアン賞を受賞した『海辺の王国』(1990)などがある。
ウェブスター,ジーン Webster, Jean(1876~1916)
 アメリカの作家。本名アリス・ジェーン・チャンドラー・スミス。ニューヨーク州フレドニア生まれ。母親はマーク・トウェインの姪。ヴァッサー大学で経済学を学ぶ。在学中から学内誌や新聞に作品を発表するほか、社会事業に関心を持ち孤児院や少年院をたびたび訪問。卒業後、雑誌などに寄稿しながら処女作『おちゃめなパッティ 大学へ行く』(1903)を出版。1906年からはしばらくイタリアをはじめ世界各地を旅行。帰国後は施設の改善など社会事業に取り組みながら作家活動を続ける。代表作となった小説『あしながおじさん』(1912)は、孤児院の少女が匿名の援助者へつづった手紙という形で少女の行動を生き生きと描いた楽しい作品である。前作の友人が行う孤児院の改革を扱っている『続・あしながおじさん』(1915)も、同じく手紙形式の楽しい話である。結婚の翌年、女児を出産後に亡くなる。
ヴェルヌベルヌ),ジュール Verne, Jules(1828~1905)
 フランスの作家。SFの創始者の一人と言われる。ナント生まれ。冒険好きで、少年時代に商船に乗って外国へ出ようとして連れ戻されたという。1847年法律の勉強のためパリに出るが、アレクサンドル・デュマらと知り合い劇作を始める。株式仲買人として生活を支えながら1856年に結婚。友人の写真家の気球建造計画にヒントを得た小説『気球に乗って五週間』(1863)が評判になり、以後『地底旅行』(1864)『月世界旅行』(1865)『海底二万哩』(1870)『八十日間世界一周』(1873)『神秘の島』(1875)など、当時の最新の科学知識を盛り込んだ冒険小説を次々に発表。無人島に漂着した少年たちを描く少年冒険小説の傑作『二年間の休暇』(1888)は、細部まで書き込まれていて大変おもしろく、日本では森田思軒訳『十五少年』ほか明治時代から訳され、『十五少年漂流記』の題でよく読まれた。純粋に子ども向けの作品は少ないが、理想主義的で道徳的であり、子どもも楽しめる冒険小説が多い。
ヴェルフェル(ウェルフェル)ウルズラ Wölfel, Ursula(1922~2014)
 ドイツの児童文学作家。ルール地方のドゥイスブルク-ハムボルン生まれ。ハイデルベルク、フランクフルトの大学などで学ぶ。教師をつとめたのち、数年間教育研究所に勤務。第二次大戦で夫を失う。1950年代末頃から創作を始め、子どもの世界への共感、ユーモアに満ちた作品で知られる。父と息子が夏休みに徒歩旅行をする『火のくつと風のサンダル』(1961)は、ちょっとしたことが冒険になる楽しさや親子の交流にほのぼのとした味わいがあり、ドイツ児童図書賞を受賞。一方、児童文学のあり方の論議を呼んだ短編集『灰色の畑と緑の畑』(1970)は、貧困や差別などの社会問題をありのままに描いて問題の解決を子どもたちに考えさせる異色作で、短い話の中に真実がこめられた力作である。
ヴォイチェホフスカ,マヤ(ヴジェコフスカ,マイア) Wojciechowska, Maia(1927~2002)
 アメリカの児童文学作家。ポーランドのワルシャワ生まれ。ナチス・ドイツのポーランド侵攻後、4年間ヨーロッパを放浪したのち、1942年アメリカに移住、50年に市民権を獲得。カリフォルニア大学を中退後、翻訳家、編集者、私立探偵、広告代理業、アナウンサー、テニスコーチなど様々な職業につきながら大人向けの作品を執筆していたが、『ティ・アンドレの市日』(1952)で児童文学作家として注目される。闘牛士になることを期待される少年の葛藤を描く『闘牛の影』(1964)でニューベリー賞を受賞。自伝的作品『夜が明けるまで』(1972)では、第二次大戦下のヨーロッパを転々とする少女の心理を生々しく描いている。愛や誇りなど子どもたちの内面の問題を多く描く作家である。
ウォルシュ,ジル・ペイトン Walsh, Jill Paton(1937~  )
 イギリスの児童文学作家。ロンドン生まれ。オックスフォード大学卒業。3年間教師をつとめたのち、歴史物語『ヘンゲスト物語』(1966)を出版して作家活動を開始。思春期の少女の心の動きを描く連作『夏の終わりに』(1972)『海鳴りの丘』(1976)は、緻密な情景描写・心理描写でつづられ、後者でボストングローブ・ホーンブック賞を受賞。他の作品に、第二次大戦下の空襲にさらされるロンドンを舞台とした『焼けあとの雑草』(1969)、ケストレル賞を受賞した17世紀のロンドンのペスト流行を描いた『死の鐘はもうならない』(1983)などがあり、現代小説から戦争・歴史を扱ったものやファンタジー・SFまで幅広い世界を的確に描く作家として知られている。

エイケン(エイキン),ジョーン Aiken, Joan(1924~2004)
 イギリスの作家。サセックス州ライ生まれ。父親はアメリカの詩人コンラッド・エイケン。イギリスで生まれ育ち、12歳までは家で母親から教育を受ける。10代のうちから詩や短編が雑誌に載ったりBBCで放送されたりした。19歳で結婚後、ロンドンの国連事務所で働きながら作品を執筆。30歳のとき夫と死別し、以後雑誌社に勤務しながら本格的に作家として活動を始める。歴史ファンタジーと言われる『ウィロビー・チェースのおおかみ』(1962)に始まる連作は、架空の19世紀でのスリルあふれる冒険物語で、『ささやき山の秘密』(1968)はガーディアン賞を受賞。他に『しずくの首飾り』(1968)などの美しい創作妖精物語集、エドガー・アラン・ポー賞を受賞したミステリー『暗闇に浮かぶ顔』(1969)、テレビ脚本として書かれた幼年童話『かってなカラスおおてがら』(1972)など多彩な作品を豊かな空想力で描く。『子どもの本の書きかた』(1982)という著作もある。
エスティス,エレナーエステス,エリナー/エスティーズ,エリノア) Estes, Eleanor(1906~1988)
 アメリカの児童文学作家。コネティカット州ウエスト・ヘイブン生まれ。高校卒業後ニューヘイブンの公共図書館に勤める。1931年に奨学金を受けてニューヨークのプラット・インスティテュート図書館学校に学び、翌年から1940年まで同市の公共図書館に児童図書館員として勤務。病気療養中に書いた処女作『元気なモファットきょうだい』(1941)は、貧しいながらも明るく過ごす子どもたちを生き生きと描いて家庭物語の傑作と評価された。絵本風の短編『百まいのきもの』(1944)は、貧しさや変わった名前、ふとした一言によるいじめという現代にもつながる問題を扱っており、考えさせられる。行方不明になった犬を探すミステリー風の作品『すてきな子犬ジンジャー』(1951)でニューベリー賞を受賞。1988年アルバータス・マグナス大学から名誉博士号を授与された。
エッカート,アラン・W. Eckert, Allan W.(1931~2011)
 アメリカの作家。ニューヨーク州バッファロー生まれ。デイトン大学、オハイオ州立大学を卒業。兵役終了後、地方新聞の記者やコラムニストとして活動し、1960年フリーのライターとなる。世界各地を旅行し、リーダーズ・ダイジェストなどに博物学的知識の豊かな文を寄稿するほか、テレビの自然番組のシナリオも執筆。フィクションを含め多くの作品を発表しており、ピューリッツァー賞の候補になったこともある。実話をもとにした『アナグマと暮した少年』(1971)は、カナダの開拓地を舞台に少年とアナグマとの交流、家族や隣人との確執を描いており、心理描写もさることながら自然描写がよくできている。ファンタジー『みどりのトンネルの秘密』(1984)もあるが、模倣作の域を出ていない。
エルショーフエルショフ),ピョートル・パーヴロヴィチ Ершов, Пётр Павлович(1815~1869)
 ロシアの詩人。西シベリアのトボリスク県近郊の村で生まれる。ペテルブルグ大学卒業。中学の教師、校長、検閲官などを務める。大学在学中の1834年、民話をもとにした物語詩『せむしの小馬』の一部を雑誌に発表、プーシキンの絶賛を受けたが、権力者を批判・風刺するものでもあったため、検閲に遭い完全な形のものは1856年になってから出版された。正直者が様々な難題を解決して成功する冒険がおもしろく、絵本や映画、バレエなどにもなった。
エンデ,ミヒャエル Ende, Michael(1929~1995)
 ドイツの作家。南ドイツのガルミッシュ-パルテンキルヘン生まれ。父親はシュールレアリスムの画家エトガル・エンデ。シュトゥットガルトのシュタイナー学校を経てミュンヘンのオットー・ファルケンベルク演劇学校で学び、1951年から演劇俳優として活動しながら脚本を執筆。劇作では認められずにいたが、児童文学としての処女作『ジム・ボタンの機関車大旅行』(1960)でドイツ児童図書賞を受賞。時間をテーマに現代人の生活の仕方を問いかけるファンタジー『モモ』(1973)で再度ドイツ児童図書賞を受賞、のち自らの主導で映画化された。人間の想像力の問題を扱った『はてしない物語』(1979)は、少々盛り込み過ぎだが凝った構成のファンタジーで、世界的なベストセラーになりアメリカで映画化された。主張がかなり前面に出ていてやや教訓臭が強いが、豊かなイメージに満ちている。絵本や大人向けの作品もある。
エンライト,エリザベス Enright, Elizabeth(1909~1968)
 アメリカの児童文学作家。シカゴ近郊のオーク・パーク生まれ。高校卒業後、ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグとパリで絵を学び、20歳で挿絵画家として仕事を始める。物語の執筆も始め、1935年に処女作を出版。自ら挿絵も手がけた『ゆびぬきの夏』(1938)は、アメリカ中北部ウィスコンシン州の農場での少女の心理や素朴な生活が生き生きと描かれ、ニューベリー賞を受賞。日常生活の中の冒険を扱った連作のほか、美しい不思議な国での一人の少女をめぐる出来事を描いた珠玉のファンタジー『ひかりの国のタッシンダ』(1963)などの作品がある。

オセーエワ,ワレンチナ・アレクサンドロヴナ Осеева, Валентина Александровна(1902~1969)
 ソビエト時代のロシアの児童文学作家。ウクライナのキエフ生まれ。キエフのルイセンコ学院演劇科に学ぶ。母親の経営する孤児や浮浪児のための施設で働きながら、マルシャークと協力して、子どものために自作の物語を話して聞かせたり、芝居を上演したりする。1937年に短編が新聞に掲載され本格的な作家活動を開始。作品に、短編集『魔法のことば』(1944)、ピオネール少年団の活動を描く『ワショークと仲間たち』(1952)などがある。社会への義務、正義、友情などを扱い、いかにもソビエトの話らしく健全で教訓的だが、かえってはっきりしていて嫌味でなくわかりやすい。
オデール(オデル)スコット O’Dell, Scott(1903~1989)
 アメリカの作家。ロサンゼルス生まれ。スタンフォード大学、ローマ大学などで学び、卒業後は映画監督、新聞記者、雑誌編集者など様々な職業を経て作家となる。第二次大戦では従軍。大人向けの評論や歴史小説を執筆していたが、当時の子どもの本に失望して、実話をもとにした孤島に取り残された少女が一人で暮らす物語『青いイルカの島』(1960)を発表し、ニューベリー賞を受賞、映画化もされた。他の作品に、16世紀のメキシコでの黄金をめぐる歴史物語『黄金の七つの都市』(1966)、真珠と伝説の大エイとの戦いを通じて成長する少年を描く『黒い真珠』(1967)などがある。生命の尊厳、少数民族の立場、人間の欲や奢りなどを描いた重厚な作品が多い。1972年に国際アンデルセン大賞を受賞。
オルコット,ルイザ・メイ Alcott, Louisa May(1832~1888)
 アメリカの作家。ペンシルバニア州ジャーマン・タウン生まれ。理想主義的な教育者・哲学者であった父親のもと、各地を転々としながら家庭で教育を受け、ソロー、エマースンなどの思想に影響を受けて育つ。10代から教師や家事奉公をして家計を助け、小説や脚本も執筆。処女作『花物語』(1855)の出版後、南北戦争では従軍看護婦として働き、そのとき書いた手紙をもとに戦争の悲惨さを訴える『病院のスケッチ』(1864)を発表。自伝的な小説『若草物語』(1868)は、両親と四人姉妹の日常生活が明るく生き生きと描かれ、のちに映画化もされ続編も書かれた。日本では登場人物の性格の書き分けにすぐれ、アメリカの家庭小説の代表的な作家と言われる。他の作品に『昔気質の一少女』(1870)、『八人のいとこ』(1874)、『ライラックの花の下』(1877)などがある。
オールドリッジ,ジェイムズ Aldridge, James(1918~  )
 オーストラリアの作家。メルボルンやロンドンで新聞記者として働き、第二次大戦中は中近東などで特派員を務めた。旅行記、伝記、小説等様々な分野の作品を書き、1945年にリース記念文学賞、1967年には世界平和協議会金賞を受賞。オーストラリアの小さな町を舞台にした『ある小馬裁判の記』(1973)は、一頭の小馬の所有権をめぐって正義・平等・貧富の問題を描いている。モンゴルの少年とイギリスの少女の手紙文でつづられる『タチ』(1974)は、イギリスへ送られた蒙古野馬がポニーを連れてはるかなモンゴルへと向かう話で、ハラハラする冒険物語のようにおもしろく読める。イギリス在住。

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