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UPDATE 1999.6.30 |
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プリントして管理組合の参考資料にお使いください。 |
プリントされる内容は以下の目次の項目と主なデータで、A4サイズ22頁程です。
・経緯と感想
・大規模修繕の目的
・工事開始までの手順
1)まず、事前調査と体制作りから
2)コンサルタント決定まで
3)詳細調査と方針の決定
4)概略設計と長期計画の作成
5)詳細設計
6)施工業者の決定
7)工事計画の承認
・工事の実施
1)工事の開始にあたって
2)実施上の問題事例集
3)工事終了後の居住者アンケート結果
4)竣工式
・実施体制
実施責任、運営、広報
・資金計画、長期計画
・新築設計時の瑕疵について
・管理会社の変更
・投稿掲示板 -情報交換の場にしましょう-
・関係資料のリンク集
体験してみての感想ですが、大規模修繕工事とは建物の補修にとどまらず、日常管理の問題点を洗い出すこと、長期計画を見直すことであるということに気が付きました。つまり、大規模修繕を軸にして考えると、集合住宅の管理組合とは何をすべきかという事が明確になります。その観点からこのホームページをまとめてみました。
さて、大規模修繕工事で重要なことは、当たり前のことのようですが
であると思います。技術的なことは専門家であるコンサルタントに任せ、我々は要求を明確にし、工事の進行や出来上がりのイメージを早く理解し、それを出来るだけオープンにして居住者全員の合意を得る事に勤めるべきです。修繕工事が成功するか否かのポイントの90%以上が居住者の合意と協力を得ることだと言われています。
十分な資金(修繕積立金)の準備は、事前の調査では分からない予想外の追加工事のために大切であるばかりでなく、一時負担金が必要なければ工事に対する居住者の同意を得るのが楽になりますので大変重要です。
今回の私たちの工事で、居住者の協力が得られ大きなトラブルもなく終了できたのは、一時負担金が必要でなかったことと工事に関する情報公開を十分行ったことが要因と考えています。工事中の不便な生活に関わらず協力をしていただいた居住者の方、熱心に計画・設計・工事監理並びに指導して下さったコンサルタント、および誠実に工事を遂行して下さった施工業者の方々にも感謝しています。
参考に建設省のデータから「分譲マンションの供給の推移と現況」を紹介します。このデータでも分かるように、今後急速に大規模修繕が必要なマンションが増えていきます。このページで紹介するような情報を必要とする人も、今後増えると思いますので、このホームページ上で情報交換もしていけるように考えています。
マンションストックの推移 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(単位 万戸、%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(注)平成8年(1996年)以降の供給戸数については、年間14.5万戸(過去10年間の平均供給戸数)と仮定して計算した。 |
2000年には約370万戸の集合住宅が存在し、そのうち十年を経過した住宅が200万戸以上にもなります。 |
参考資料
大規模修繕工事と長期計画に関する理事会の役割(建設省住宅局HPより)
参考資料(リニューアル技術開発協会資料より)巻末にあります。
理事会で診断センターの事前調査報告書を検討し、三年後に工事を実施することを決定しました。次の定期総会に計画立案作業の開始と修繕委員会の設置を提案し承認され、大規模修繕の一連の作業がスタートしました。この総会では調査・改修設計とコンサルタント契約費用も予算計上しました。工事費用は修繕積立金の取り崩しで実施しますが、事前の調査と改修設計費用は一般管理費から拠出しました。(工事が始まってからの工事監理の契約は、工事費用と同時に積立金から拠出)
ここまでは理事会が主導で行いました。新築時に長期計画が作成されている場合は別ですが、そうでない場合は築後7〜8年目の理事会が提案する必要があります。また後述しますが、工事費用の積立金が足りない恐れもありますので、築後2〜3年目に理事会が軌道に乗ったところで長期計画を作成し、修繕積立金の見直しなども行うべきです。最近は建設省の指導等で新築時に長期計画も作成されている場合がありますが、やはり2〜3年目に理事会が内容の見直しをしておくべきでしょう。私たちの場合は、新築時の長期計画は無かったのですが、4年目の理事会が積立金の見直しをしていたので、工事費用の一時負担金徴収の必要もなく大変助かりました。
修繕委員会の最初の大仕事は、改修の設計をお願いするコンサルタントの選出です。素人集団で大仕事を進めるので、専門家の手助けが不可欠になります。建物調査と改修設計と修繕工事の監理の三つの仕事を担当してもらいますが、もう一つ重要な点は中立の立場で誠実な対応ができるコンサルタントを捜しました。通常は日常管理を依頼している管理会社が第一候補に挙がるようですが、私たちのマンションの管理会社の過去の仕事ぶりや対応を見ていると今回の大きな仕事を任すには頼りない点で委員の合意はすぐに得られました。その結果、なるべく広く探し自分たちの納得のいくコンサルタントを選ぶことにしました。広報で修繕委員や居住者の方、管理会社などから推薦してもらいました。その結果、ビル管理専門会社、建築設計事務所、デベロッパーなど7〜8社の候補が挙がりました。
その中から数社に来てもらい、会社の方針、大規模修繕に対する哲学、修繕の実績などを委員会に説明していただきました。同時に見積もり書も提出してもらい、それらの結果に基づき比較対照表を作成し、二社に絞りました。最終投票までにはかなりの議論がありました。残った二社は工事監理としては大手の一社と、業界のなかでは異色の(どちらかというと煙たがれている)設計事務所です。実績と安心感から大手を推す委員も多くいました。他方、会社としては小さいが大規模修繕工事の従来の考え方ではなく、新しい考え方で積極的に取り組もうという姿勢に好感を持つ委員も多くいました。そして修繕実績のマンション数カ所を調査して、最終的には委員全員の投票の結果、過半数を得た後者の設計事務所に決定しました。
見積金額は調査、設計、工事監理全体で、1000〜2000万円で幅がありました。最終的には金額の比較的高かったところに決めましたが、その理由は金額より取り組みの姿勢、建物の維持に対する考え方に委員が納得できたからです。また費用は工事自体の方がはるかに大きく、コンサルタント経費を少なくしても工事の質が下がっては何にもならないという理解が、委員の間にありました。またデベロッパー系の事務所に依頼すると工事施工業者との関係が強くなり、我々の不利になる可能性もあるので独立した設計事務所の方が良いとの意見もありました。もちろん比較対照表を含めて選出の全過程は、修繕委員会名で全居住者に広報しました。
契約書に関しては、建設省の告示第1206号や、建設省・建築設計工事監理業務報酬調査委員会の資料などが参考になります。
理事会で委員会の設置を決めてから、委員の募集を経てコンサルタントの決定までおよそ一年間を要しました。やや時間がかかりすぎた感がありますが、結果的には委員会メンバーの相互理解と勉強期間でした。損傷箇所について委員会が居住者にアンケートで調査を依頼し、委員自身も外壁その他を実地目視調査をしたことは、居住者の修繕への意識を高めまた委員の問題把握に役立ちました。専門家もいないので、何をすべきかの議論が多く出て、遅々として進まない時期がありました。しかし今考えると、この時期はコンサルタントを早く選出/決定することを最優先にするべきと思います。その後の作業項目、課題はコンサルタントが出してくれますから。
この間の活動例 他のマンション工事の見学記 巻末にあります。
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詳細設計段階での問題点は、工事用車両の駐車場確保、現場事務所設置場所の決定などの敷地利用方法と工事範囲(共同管理と各戸管理の区分)です。駐車場や現場事務所は一部の居住者に迷惑をかけるので、決定までに時間がかかりました。また工事範囲についても共有と専有の境界についてひとつひとつ具体例で検討し、決定していきました。給水管や電気配線の管理責任範囲を明確にし、玄関扉や郵便受けは表と裏を分けて考えたりしました。さらに、工事を行う上で必要な作業(足場を組むための私用植木類や構築物の撤去、防水工事の際のベランダ人工芝撤去やエアコン室外機の移動など)の費用負担の問題もあり、これに関しては費用が各戸バラバラなので各戸負担としました。この件で居住者から基本的な考え方にクレームはありませんでしたが、規約に抵触してベランダにタイルを敷き詰めていたり、専用庭に板張りのフロアーを作っていた方もあり、撤去費用がかさむ場合は実施段階で個別に説得しました。
工事業者の選定過程はできる限り公にして居住者が疑問を持たないようにしました。もちろん入札後ですが、公募方法、入札業者リスト、見積金額、折衝後の確定金額をすべて広報誌で明らかにしました。全居住者の財産でもある修繕積立金の使用過程はガラス張りであるべきです。そうすることにより、工事の実施に関して居住者の協力も得られます。
これに先立ち、工事予定金額の詳細(戸あたり費用の概略)を公表するか否かについては委員会、理事会の中にも賛否両論がありました。工事業者の入札前なので予定金額がもれると談合等の恐れもあり避けるべきであるとの意見と、総会で決議する前に情報はなるべく明らかにすべきであるとの意見がありました。議論の結果、修繕積立金増額の提案もする予定だったので公表する事にしました。入札業者をなるべく異業種を含むようにしてあるので、談合の危険性は少ないとの読みもありました。実際は予定金額より約2割低い落札金額だったので総会でもスムーズに承認され、公表は結果的によかったと思います。
臨時総会では、組合員の約7割の議決権行使があり、反対は1%でした。さらに12年後の大規模修繕工事の準備として修繕積立金の値上げも同時に提案し、承認されました。その時の説明内容は別項に記してあります。
総会当日は50名ほどの参加者がありましたが、事前に説明会と広報誌で十分な説明をしたので、基本的に工事の実施や修繕積立金の値上げに反対意見も出されずにスムーズに終了しました。総会後に各戸の負担になるオプション工事の費用についての質問があり、住民の関心はもっと実際的な事柄にあることが分かりました。
その後、施工業者による工事説明会を開き、より詳細な説明を行ないました。防水工事の妨げになるベランダの人工芝を剥がしたり、足場を組む際に邪魔になる庭の植木の移動などの各戸費用負担のオプション工事の説明も行いました。その時は二日間で計四回の説明会を開催しましたが、全戸の約50%にあたる世帯の参加がありました。総会前の居住者説明会に比べると参加者も一段と増え、関心が高まってきたのが分かります。質問も具体的になってきて、ベランダにタイルが張ってある家庭など個別の問題点も分かってきました。
同時に工事監理の業務委託契約と工事請負契約の契約書の検討と契約締結を行いました。工事請負契約書は7つの社団法人で提案している民間連合協定の工事請負契約約款をベースにしました。(民間連合は以下の7社団法人です。日本建築学会、日本建築協会、日本建築家協会、全国建設業協会、建築業協会、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会)
・業者の選定から工事までの日程表
・工事中の生活不便項目の広報内容 巻末にあります。
工事は近所の富岡八幡宮で行った安全祈願祭から始まりました。並行して現場事務所、工事関係掲示板の設置を行い、足場架設のための自転車移動、専用庭の植木等の移動を居住者の方にお願いしました。
毎週土曜日の夕方に、三者(工事請負会社、工事監理会社、修繕委員会)の定期会合を開き、そこで工事の進み具合のチェックと工事を進める上での問題点確認及び解決策の検討を行うことにしました。
実際に工事が始まると様々な問題点が発生しました。そのいくつかを以下に列記しますが、経験不足のために起きた問題の他に日常の管理が不十分であったために起きた問題もあり、管理組合のあり方について考えさせられました。
自転車仮置き場
工事準備を始めてすぐ問題が発生しました。当初、自転車置き場は半分ほど使えて、一部を移動すればよいと考えていましたが、実際には全面的に移動する必要があり、自転車仮置き場のスペースが足りない事が分かったのです。緊急に理事会で検討した結果、二階建ての仮置き場を作るなどのアイデアが出ましたが、何とかスペースを探して収納することで乗り切りました。玄関の通路にも自転車が溢れ、通行にも不便な状態で、居住者の方にも大変迷惑をかけました。もう少し前に分かっていれば、自転車の整理も出来たのですが。(私たちのマンションは自転車を毎年登録する制度を導入していたので、今年の分を早めに実施しておけば良かった。自転車共有制度の導入で自転車の総数を減らしておくことも可能だった。)
機械式駐車場
次に発覚した問題は、駐車場に関してです。敷地内の駐車場は一部が二段式の機械駐車場になっているが、その施設が予想以上に痛んでいることが分かったのです。常日頃塗装をするなど手を入れていれば、こんなにひどくはならなかったと予測され、メンテナンス会社、管理組合、利用者、管理会社の管理体制に問題があったようだ。
調べてみると油圧で上下する方式は、メンテナンス費用が高価で、最近はあまり使われなくなっているようです。費用対効果の点からも、この際全面的に入れ替える案も出されましたが、検討した結果、傷みのひどいパレット部分のみ全数交換しピット内の排水を改善することになりました。費用は工事の予備費だけでは賄えないので、新たに積立金を取り崩す総会決議(工事期間内の定期総会)をしました。管理会社まかせのメンテナンス契約内容チェックと日常の管理の大切さが身にしみました。
ベランダ工事
工事に必要なベランダの整理に関しても問題が発生しました。ベランダにタイルを敷き詰めている人があり、撤去費用が高価で個人負担できないと撤去を拒んだのです。本来、ベランダは共有部分でありタイルを敷き詰める等の無断改変工事は禁止されています。しかし現実に発生してしまった場合の処理に苦労しました。このような問題は、日頃から広報等で十分に周知しておく必要があります。
各家庭のベランダにはエアコンの室外機や植木類があり、防水工事のためには全面的に移動しなければなりません。植木類は部屋の中に収納するには量が多いため、敷地内に一時置き場の台を作りました。そこへ各家庭で植木を運んでもらい、水やり等の管理と撤収も各自の責任で行いました。しかし結果的には枯れてしまった植木が多数発生したこと、最後に撤収されずに残ってしまった植木類も多く出て、あまり良い方法ではなかったようです。しかし、他によい案は出ませんでした。今後の課題です。
工事終了後のアンケートで一番不満の多かったのが、ベランダ工事に関することでした。塗装のために窓や換気口やエアコン室外機に養生(ビニールで覆う事)をしたために、室内が蒸し暑く不快な生活を強いられたからです。各家庭の工事期間は二週間ほどでしたが、生活者にとってはつらさの一番の山場です。いつ洗濯ができるのか、いつビニールが取れるのか、いつエアコンが使えるのかと1日千秋の思いでした。玄関周りの工事も含め、生活に直接関係する工事は期間を短縮する方法、きめ細かい連絡など施工側の工夫を是非お願いしたいところです。私たちがお願いした業者の方も、その辺は十分に理解していたのですが、現在良い解決策はないようです。業界全体として新しい技術開発(工事法、工程管理システム)を出来ないものでしょうか。
ダクト清掃
台所や風呂場の換気扇ダクトの清掃では予想外の問題が発生しました。今回の大規模修繕は専有住居の外部を中心に実施しましたが、台所の換気扇排気口からの汚れが外壁の汚れを加速する恐れがあったので、唯一の例外として専有住居内部の天井裏排気ダクトの清掃も一斉に実施しました。その過程で、吸気ファンに吸気ダクトが接続されていなかったり、接続が間違っていて逆流したりしている箇所が発見されました。接続部分がテープでしっかり固定されていないため振動音が大きいものもありました。天井裏のダクトは普段は見ることもないので、居住者の方もおかしいなと思いながらそのままにしてある場合が多いようです。
点検口から簡単に直せる場合は問題ないのですが、場所によっては天井の一部を切り取る工事が必要になり費用負担が問題になりました。明らかに新築時施工の欠陥なので、費用負担は新築施工業者と折衝しました。この件に関しては施工業者も非を認めて、工事はその業者が行いました。
同様な問題は今回は対象にしなかった床下の排水管や電気工事など、通常の生活では気付かない部分にも発生する可能性があります。大規模修繕工事はこの様な新築時の瑕疵を発見する可能性が高く、保証期間の考え方に大きな問題提起をしていると思います。その意味で大規模修繕工事は、新築を担当した業者とは別の業者に依頼したり、改修設計はデベロッパーに依存しない設計事務所などに頼むのも意味があると思います。
工事予定の広報
修繕工事の特徴は、なんと言っても生活をしながら工事をしなければならない事です。生活者の実感としては、まるで工事現場に住んでいるようでした。そのような状況で住民が知りたい情報は、自分の家に工事が来るのは今日なのか、明日なのかということです。一方、工事をする側では数日の期間内に何軒かをまとめて処理したい事情があります。この数日のずれがいろいろな誤解を生み、住民の不満が現場事務所に寄せられることになります。
また、奥さん同士の情報網で、工事の進行より情報が先行して、私の家はきちんとした工事がされていないなどの不満がありました。工事の内容は細分化されており手順に従って実施されるのですが、生活している側からはそれが良く見えません。工事業者には広報はなるべく細かくしてもらうように頼みましたが、限界があります。工事全体が見えるように分かり易く表現し広報する点に関しては、良いアイデアはありませんでした。工程管理と住民への広報をきめ細かくリンクできるようなソフト開発が必要ではないかと感じました。
修繕委員会の運営で重要なことは理事会との関係です。重要事項の決定や、総会の開催は理事会の責任ですから、委員会での討議内容・決定事項は逐一毎月の理事会に報告が望ましく、その意味で理事との兼任者がいることは大変都合がよいと思います。私たちの場合は、工事の実施を決めた臨時総会の前2〜3カ月は、修繕委員会にも理事長始め多くの理事に参加してもらいました。工事業者の決定、積立金の値上げについては一緒に討議、決定しました。
広報については当初から気をつけました。修繕委員会の設置を知らせる広報誌の0号で行ったアンケートでも、検討の途中経過を知らせて欲しいとの意見もありました。また、設計コンサルタントを決めるに際し行った各社のヒアリングでも、大規模修繕で一番重要なのは居住者のコンセンサスであり、その為にきめ細かい広報活動は大切であるとの印象を受けました。
他マンションの修繕見学からヒントを得て、途中からですが、色紙を使い、ロゴも統一して毎月発行するようにし、多くの広告ビラの中から一目で修繕に関する広報誌であることが分かるように工夫しました。色紙とロゴは工事が始まってから工事業者が発行する掲示、広報にもそのまま使っていただき統一性を貫きました。
同様に次回(12年後)に備えて、積立金の増額を準備しなくてはなりません。次回は一戸当たり約150万円、中間の6年後の中規模修繕も加えると、約200万円と予測されています。臨時総会で工事計画の承認と共に、今後の修繕積立金の増額も承認を得ました。その時は以下の四資料を示して説明し、大きな反対意見もなく乗り切れました。
・積立金残高の推移
当初、修繕積立額は一戸当たり平均月額2300円程でした。そのままでは図中の実線のようになり、今回の工事費用は充足できませんでした。4年目に当時の理事さんたちの努力で、平均月額6600円に増額し、その後も駐車料金を修繕口に繰り入れるようにして積立の増額を図り、そのため今回は一時金なしで工事が出来る見通しとなりました。
・今後の積立金の推移予測
三通りの予測値を示し、結果として現行の1.5倍に値上げし、6年後に再度見直すことにした。
・修繕積立金の実例
値上げ後の修繕積立金のレベルが他のマンションの例に比べて決して高くはないことを示した。数値は1996年当時のもので、あくまでも参考値にして下さい。
・長期計画の戸あたり費用概算
概略工事費用を全戸数で割った金額です。したがって建物の規模やタイプによって変わりますのでご注意下さい。平成10年の金額は入札前の予定額です。社会状況などに左右されるので、あくまでも参考にとどめて下さい。また今後の工事金額の変動などは考慮していません。
項 目 比 率 管理室(人)の対応が悪い 36% 雨漏り等建物の傷みがそのまま 28% ペットの苦情改善して欲しい 18% 居住者のモラルアップのアピールを 15% 共有部分の清掃の質低下 15% 自転車置き場整理 13% 管理室の時間延長 13% 誤報時等のアナウンス改善 13% ごみ置き場の整理 10% 違法駐車の取り締まり 8% 外部の人の出入りが多い 8% ピンクチラシ等の取り締まり 8% その他 電気、水道、ガスなどのメンテナンス会社の 連絡先リストが欲しい 来客用駐車場が欲しい レンタカー仮置き場が欲しい ピアノなどの上部階の音がうるさい 自動販売機の周りが汚い タバコの自販機は撤去して欲しい 植裁が貧弱になっている 駐車場の抽選方法改善 総会に書類が見にくい
見直し作業のはじめに管理会社数社に同一の条件で見積もりを出してもらい、管理の質改善の検討を行いました。見積もりを依頼した管理会社は、マンション管理に関する新聞を発行している会社から、紹介してもらいました。もちろん現在の管理会社も含まれています。その検討結果を一覧表で示します。
最大の決定要因は、費用でした。現在の管理会社も、従来より年間で戸あたり約5千円ほどのコストダウンを提案してきましたが、比較表で見ると従来より3万円も低い見積もりを提示してきたところもありました。
内訳を検討すると、委託管理料、駐車場保守費、昇降機点検費など企業努力の結果であることが確認できたので、管理会社を変更する決断をしました。
1 会社規模に対する役員数など、経営の効率化が認めらる。
2 駐車場と昇降機の点検会社と交渉し、コストダウンの努力をした。
等の点が決め手でした。コストダウンは修繕積立金を2500円値上げしたことに相当します。
もちろん費用以外のポイントも重要で、主には
1 経営トップが具体的な提案を積極的に行ってくるなど、
経営姿勢に好感が持てる。
2 管理組合が管理人のプロファイルを指定できる。問題がある場合
は交代を要求できる。
3 事務所窓口の朝晩の営業時間を延長できる。
4 長期修繕計画に対する取り組み姿勢。
などですが、住民にとっては当然な内容ばかりです。しかし、いずれも現在の管理会社に対する不満が背景にあるため、重要視されました。こんな当然な点が決め手になるところが、現在のマンション管理業界の問題点であるような気がします。
居住者の不安は?
しかし決定のための臨時総会では、管理会社を変更することに対する不安が多く出されました。本社が東京にないので対応が遅くなるのでは? 十二年間の実績が無駄になるのでは? 仕事を取るためのダンピングではないか? 管理の質が落ちるのではないか? 等です。しかしそれらは実情をよく知らないための不安で、管理組合が自信を持って一つ一つ応対し納得していただきました。結果的に反対票は4票(全住民の1%)で、多くの方の賛同を得て承認されました。
現在のマンション管理業界と管理組合には、多くの問題点があると思います。マンション管理会社の多くは、新築時の施工者の一部門や関連会社である場合が多い。今回見積もりに参加した管理会社も、ほとんどはデベロッパーの関連会社であった。よく指摘されるように、ほとんどのマンションは、新築時に無競争で指定の管理会社が管理を請け負い、その後も抜本的な見直しをせずに、自動延長契約で推移しているのが一般的ではないだろうか。
現在のぬるま湯体質が、上述した「住民にとっては当たり前の要求」が、革新的なことに感じられる状況を生み出していると感じます。最近は新築分譲の際のうたい文句で、「管理の質」を強調している例もでてきてはいますが、マンション管理業界全体がもっと近代的な体質、競争原理を導入出来る体制になることを期待したい。
私たちの場合も同様で、歴代の理事会が問題を感じつつも、なかなか変更に踏み切れませんでした。何人かの住民(理事経験者)に話を聞くと、「よくやった」と今期の理事会に拍手を送っています。理事会の強い意志が、約1,400万円あまりの経費節減を達成したのです!
そこで修繕工事を体験して各種の情報をもっている方の情報交換の場として、このホームページを開放することにしました。御自分の体験例や役に立つ情報など、これから修繕工事を始める方に参考になる情報をお寄せ下さい。その際、名前、所属、メールアドレスの公開の可否についてもお知らせ下さい。2〜3週間でHTML化して掲載いたします。ただし他者の非難・中傷、企業宣伝など適切でない内容については掲載をお断りする場合があります。