逆で行こう!過去ログ-23-

西武ライオンズを中心に日本プロ野球界のことについて
あえて違った視点から見て考えてみよう。
(基本的に他の掲示板に書いたモノの焼き直しです)

 

誰が堤義明をここまで追い込んだのか?(04.10.24記)

 西武ファンは堤オーナー嫌いな人多いですよね。森監督時代の「やりたければどうぞ」発言のマスコミによる曲解からアレルギー反応が始まり、今回の1リーグ発言で、完璧に症状悪化、鼻水も涙も出まくり、体中痒くてたまらんて感じでしょうか?

 でもね、だれがここまで堤オーナーを追い込んだんでしょう?そして、果たして世間で言われている程堤オーナーは「悪」なのでしょうか?西武ファンぐらいは堤オーナーを認めてあげないと、可哀想だし正直ヤバイとすら僕は考えます。

 まず。堤オーナーが居なかったら、パリーグなんてとっくに潰れていると言う話。ちょっとネットで検索掛ければ解ると思いますが、70年代前半のパリーグは本当にやばかった。西鉄、大映、東映が球団経営から手を引き、引受先企業もなかなか決まらなかった。西鉄晩年の入場者数は30万人に満たないと言う話。リーグの半分のチームが潰れかけていたので、パリーグ解散との話すらあったほどです。

 幸い、中村長芳と言う一個人の働きにより、何とか6球団は維持されたのですがそれでも現在以上に厳しい状況は続き、どの球団も親会社の宣伝との名目で慈善事業として運営されていたのが事実です。ラジオもテレビも無く新聞の扱いも2.3行。よくこんなリーグが今まで続いたものだと思います。

 そんなどうしようもないパリーグの中でも、さらにお荷物なライオンズと言う球団を堤オーナーは買い取りました。ここからパリーグの歴史は変わるのです。球団は九州から埼玉に移しました(今思えばこれが堤オーナー唯一にして最大の失敗とも言えますが)。黒い霧事件や、その後のスポンサーたらい回し、万年Bクラスの印象を払拭するには仕方のないことだったのでしょう。さらに球団事務所は当時日本一の高さを誇る、サンシャイン60に開設し都会的演出にも成功します(笑)。

 同時に所沢には西武園、ユネスコ村と共存する一大レジャースポットとして西武球場を建設。それまでのパリーグの観客=酔っぱらったおっさんのイメージをこれまた払拭する、近代的なクリーンな球場で観客を魅了します。新球団のメインカラーは抜けるような空色に決定。水色に縞、緑に黄色、白地に赤黒らの、古くさいイメージのユニフォームの中でライオンズブルーのまぶしさは、首都圏の子ども達のハートをわしづかみ。帽子のライオンも手塚治虫のデザインと凝った刺繍で、これまた子どもの憧れとなりました。

 真弓、若菜と言う次世代のスターを放出してまで、全国的スターの田淵を獲得。また山崎、野村ら峠を過ぎたとは言うモノの、これまた各球団のスター級選手を獲得し、ここでも万年Bクラスの田舎球団イメージの払拭に尽力。当然これらの仕掛けを手がけたのは根本管理部長その人ですが、その根本氏に自由にやらせたのは堤オーナーなわけです。

 こうして新生西武ライオンズは、球団結成初年度から球界の注目を一心に浴びてスタートします。成績こそ伴わなかったモノの、観客動員は順調。巨人=読売=日テレを見習い、西武=毎日=TBSと言う協力体制も構築。全く中継がない、2.3行しか記事が載らない。と言う状況から脱却し世の中にパリーグと言うプロ野球リーグがあり、そこに西武ライオンズが有ると言う事もあっと言う間に世の中に浸透しました。

 そして文化放送と読売のもめ事から、瓢箪から駒で「ライオンズナイター」が始まる事となります。地方ならまだしも、首都圏の放送局がパリーグの1球団の中継を毎日するこれが、どれほど画期的だったことかは以後追随する放送局が無いことでもおわかりでしょう。しかし、これによってまた一般人の間にパリーグの西武ライオンズは定着することとなっていくのです。

 82年監督に広岡氏を迎え見事に初優勝、ここからの栄光の歴史は皆さんご存じでしょう。観客動員数も当時のパリーグでは珍しく、常に100万人オーバーを記録し続け、パリーグで始めて200万人が視野に入った球団でもありました。また、ライオンズグッズの売れ行きも好調で、パリーグで唯一の黒字球団と言われたのもこの頃です。

 そうです。パリーグでもやりようによれば100万人を越える入場者を得られ、パリーグでも黒字球団になれる事を証明したのは、西武ライオンズ堤オーナーな訳なのです。西武ライオンズと言う太い柱が出来た事によってパリーグは変わります。一時解散かと言われていたリーグが、毎年着実に観客動員を伸ばしていくのです。現在のダイエー、一時期のオリックスの成功も全てライオンズがパリーグでも商売になる事を証明したから有るわけです。

 ここまでは、堤オーナーがパリーグを救った話です。しかし13年間で11度の優勝を誇ったチームにかげりが見えてきます。

 堤オーナーがライオンズを買収した時に語ったと言われる野望に「巨人を倒して球界の盟主になる」こういうモノが有りました。この発言に、世のアンチG、そしてパリーグ党はしびれたわけです。そして実際に成績面では、完全に巨人を凌駕しました。でも球界の盟主にはなれませんでした。何故か?あまりに強すぎたために世間からいや、マスコミに嫌われてしまったわけです。

 毎年毎年優勝するライオンズ。それを倒そうとパの他球団は必死になりました。それが戦力、作戦面等のグランド内でのモノなら文句は言いません。しかし、鉄壁の戦力を誇ったライオンズを崩すために大沢監督や仰木監督は、マスコミを利用して揺さぶりをかけてきました。「ライオンズの野球はバント、バントでつまらないしアグレッシブさが無い」確かにうちは初回からバントをします。しかし、対巨人日本シリーズでの辻の走塁を見ても解るように、足でも常に次の塁を奪おうとする大変攻撃的なチームでしたし、ホームランの破壊力も6球団一でした。

 大沢、仰木両監督の言っている事が、全く事実に反している事はちょっと野球を見ている人には理解出来ることでした。でも毎年ライオンズが優勝する事に飽きていたマスコミは、新鮮なネタとしてこれに飛びつきます。マスコミで毎日毎日同じ事を言われれば、一般人の感覚として「ライオンズはバント野球でつまらない」と言う風に簡単に刷り込まれます。

 そうして「ライオンズ=森監督=つまらない」と定着してしまうのです。問題はここでライオンズファン自身が、西武ライオンズを支えなかったと言う事です。マスコミが勝手に流したイメージに、ライオンズファン自身が乗ってしまい、「ライオンズファン=格好悪い」と、ライオンズを応援する事を止めてしまいます。こうして観客動員は年々減っていきます。

 その頃ライオンズから根本氏を引き抜いたダイエーは、無様な試合をしながらも着々と観客動員を伸ばしていました。西武ライオンズが辿ったのと同じ道をダイエーは歩んでいました。しかし根本氏はライオンズでの失敗からたった一つライオンズと違うチーム作りをしていました。「強すぎないチーム」これがダイエー成功の最大の秘訣です。

 強すぎて嫌われたライオンズ。ダイエーはこれを反面教師としました。圧倒的な戦力を誇りながら、采配面に多少疑問の残る王監督を長年起用。この事によってダイエーは、毎年毎年確実に優勝できる戦力でありながらそれをしません。しかしこれによってファンの応援はより強いモノになります。

 「去年は惜しかったから、今年はもっと応援して優勝させよう」

 「俺達が応援したから今年は優勝が出来た、最高に嬉しい」

 絶妙です。ファンが飽きる隙を与えません。同時に毎年毎年優勝しているわけでは無いので、選手の年俸も倍々ゲームで上げる必要が無く、そう言う意味でも健全な経営が出来るはずでした。

 そんなダイエーは、スパイ疑惑という不祥事を巻き起こします。しかしこの不祥事すらもダイエーは追い風とします。プロ野球の高等技術である相手選手の癖、配球の伝達をパリーグは一切禁止します。全くお門違いな小手先だけの改革でした。この後パリーグは一気にバカホームランリーグとなり、セリーグに全くかなわなくなります。パリーグの崩壊はこの辺りから確実に始まり、近鉄崩壊の原因となる中村ノリを生み出したのもこのバカホームラン野球のせいなのです。

 完璧な戦力、完璧な作戦、完璧な球団運営をしながら、ライオンズは敗れ去りました。堤オーナーの大きな挫折です。ここまで堤オーナーがやってきた事を、ライオンズファンは感謝こそすれ、非難なんて出来ないと思います。堤オーナーがライオンズを駄目にしたんじゃないんです。マスコミと、多くの根性の入っていないライオンズファンが、ライオンズを駄目にしたのは明かです。

 最初にも記しましたが、こうなってくると西武球場の立地条件の悪さが問題となります。訪れるのに手間が掛かりすぎる。会社帰りにふらっと寄れない。それでも堤オーナーは、ライオンズを埼玉に、所沢に残そうとします。見事な地元密着と言え無いでしょうか?遅ればせながらドームにもしました。松坂も取りに行きました。結果はどうであれ、やる事をキチンとやっているオーナーと言えるでしょう?

 それでもライオンズファンはそっぽを向き続けました。「ライオンズ=格好悪い」このイメージで、関東でもダイエーファンが増えてきました。手を打っても打っても、ライオンズファンはそっぽを向く。普通のオーナーなら、球団を手放してもおかしくありません。

 ライオンズファンは埼玉、所沢に球団を残して欲しくないのでしょうか?

 そりゃ僕もいい加減バカライオンズファン歴が長いです。例え千葉に行こうが、福岡に行こうが、ファンである事は変わりません。名前からライオンズが消えても、選手がちりぢりバラバラになっても何とかライオンズの残り香を探して、そのチームのファンとなるでしょう。でも球場に足を運ぶ回数は激減するでしょう。所沢にライオンズが有るからそしてそこに仲間がいるから毎年半数以上の試合に足を運ぶのです。

 堤オーナーほど、ファンの事を考えているオーナーが他に居るでしょうか?

 今回の1リーグ構想。全てはライオンズが「西武ライオンズ」として「埼玉所沢」に残ることを大前提としての行動でしょう?埼玉所沢で、今以上の観客を集めるのが難しいなんて事は、長年球場に通い続けている人間なら誰でも解ることです。また、正直西武ドームに足を運ぶファンは、連日5万超満員より2万人ぐらいが心地よいと考えている人も多いでしょう(首位攻防戦や優勝争いが白熱する9月位は満員で有りたいですが)。

 では、埼玉所沢に西武ライオンズを残して、それでいて健全な球団運営が出来るにはどうしたら良いのでしょう?選手の年俸を極端に抑える?放映権料の分配?どちらもなかなか上手く行きそうにありません。そこで堤オーナーが考えたのが、巨人との同一リーグ構想です。これなら巨人戦の放映権料が入ってきます。関東のバカ巨人ファンも駆けつけるでしょう。今より遙かに安定した球団運営が出来るでしょう。

 でもね、これ堤オーナーは大喜びで提案した訳じゃないと思うんですよ。前記したように堤オーナーの球団買収時の野望は「巨人を倒して球界の盟主になる」だったんですよ?それなのにその球団に頭を下げて、一緒にやってくれなんて、どう考えても気持ちの良い話じゃないでしょう?この「巨人を倒して球界の盟主になる」は、単純に試合の勝ち負けではなく本気で、人気も実力も日本一になるつもりだったんですから。完敗なんですよ。

 ここでの堤オーナーの心中を察すれば、ライオンズファンももう少し堤オーナーに好意的になれませんか?ライオンズファンが球場から遠ざかった事により、堤オーナーにこんな大きな挫折を味合わせてしまったんですよ。

 この時点で堤オーナーはライオンズを放りだしても良かったんです。よく報道される「堤オーナーは球団運営に意欲を持っていない」と言うのはこの辺りの事を指しての事でしょう。でも、堤オーナーはまだ埼玉所沢に球団を残し続けてくれています。確かに黄金時代ほど、湯水のごとく金を使っているわけではありません。でもちゃんと毎年優勝争い出来る程度の戦力は維持していますし、前記したドーム化、松坂獲得など、キチンとした運営をしていると思います。

 そのうえ今回の1リーグ構想です。これこそが埼玉所沢にライオンズを残すための苦肉の策だったわけです。堤オーナーは挫折を乗り越え、発想を転換したわけです。巨人と同じリーグになって、巨人のライバル球団となろう。阪神巨人戦のように、西武巨人戦を球界の黄金カードにしようと。人気で巨人を越える事は出来なくても、巨人のライバル球団として同等の人気を誇り、実力では完全に凌駕してみせる。これが新たな堤オーナーの野望だったのではないでしょうか?

 何年掛かるか解らない壮大な野望です。でもそれに堤オーナーは取り組もうとしているわけです。阪神では人気はあっても正直成績にムラが有りすぎます。でも西武ライオンズなら。巨人のライバル球団たる成績が残せるチームとなるでしょう?アンチ巨人の声援は全て「西武ライオンズ」に注がれるわけです。どうしてこの壮大かつワクワクする発想を喜べないのでしょう?ライオンズファンは。

 堤オーナーがライオンズを売却したら、ほぼ確実に埼玉所沢から球団は無くなりますよ?堤オーナーだから、西武鉄道が親会社だから、ライオンズは埼玉所沢に存在し続けられるのです。

 いや、僕も日本シリーズがパーになる1リーグ制には反対です。でも巨人と同じリーグにはなりたいじゃないか?巨人を倒したいじゃないか?そう言う意味で、堤オーナーの構想には反対できませんし、くたばれ堤なんてとても言えません。個人的わがままを言えば、ダイエーと巨人の入れ替え。これがもっともバランスの取れた新2リーグだと思います。ほっといても球場が満員になる超人気球団、阪神とダイエーが有れば、巨人が居なくてもどうにかなるでしょう?交流戦も12試合ずつやれば放映権料もなんとかなるでしょう?

 今回の騒動、球団運営にやる気が無いチームのとばっちりを喰らってるわけですよ。どうして近鉄のヘボ経営、一部選手のバカ年俸のあおりを健全経営を目指して頑張っている球団が喰らわなきゃいけないんでしょうか?近鉄ファンは「合併反対」を叫ぶ前に「ノリ減俸」を叫ぶべきだったんです。たった1回の優勝で浮かれてる場合じゃなかったんです(含む横浜)。

 他球団のピンチを救う気があって、どうして自チームのオーナーが頑張っているのを理解してあげられないのか?本当にライオンズファンは不思議です。

 マスコミに押しつけられたイメージで考えないで、堤オーナーのしてきた事をキチンと考えてみて下さい。まず自分の頭で考える事が大事です。好き嫌いは別として、とにかく堤オーナーはライオンズファンの為に良くやっていると思います。

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