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粥村で聞いた話


『粥村で聞いた話』とか『ホビット庄のうわさ話みたいに確か』でないなんていいまわしがあるからな
(旧訳『二つの塔』下96ページより)
2000.9.2 高橋 誠

 という訳であまりあてにならない質問と答のコーナーです。Breeの訳としては、「丘」という意味なんで「粥村」は適当でないとして、新訳ではブリー村に変えられています。「いいかげん」という意味を残すために敢えて「粥村」としました。質問がありましたらまでどうぞ。
 最近はあてにならない亭主のではなく、皆様の回答も載せています。誤解の恐れはないでしょうが、「あてにならない」は亭主の回答だけにかかりますので。念の為。

目次

Q Nindalf vs Gandalf

さんから質問を頂きました。
指輪新訳になって、Nindalf の片仮名表記がニンダルフよりニンダルヴに変更されたのは有名(?)な話ですが、Gandalf の表記はいかに?
ガンダルヴ?

 さんからコメントを頂きました。

UNFINISHED TALESのTHE ISTARI(George Allen & Unwin 1980ではp.399)の中で
 Gandalf is a substitution in the English narrative on the same lines as the treatment of the Hobbit and Dwarf names. It is an actual Norse name
Gandalf must be supposed to represent a Westron name,
とあります。
 発音についてはどうなんでしょうね。「現代化された形」とみなすべきなのか、確かに元はGandalfrだったのでしょうけど。ドワーフの名前の発音と同様に以前からひっかかっています、私も。

 さんからコメントを頂きました。

 『エッダ』中『巫女の予言』12節では、Gandalfrという名前がありまして、古北欧語古ノルド語では、fは有声音に挟まれるとき濁音になるという性質があるので、vという発音になる、ということがあります。実際、この性質は古英語にも見られる、ゲルマン語に共通の性質ですが、トールキンの言っていることはこれに基づいていると、私には思われます。この古ノルド語の語末のrは、主格を表す主格語尾でして、現代スカンディナヴィア語(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー語)では、表記されず省略されるのが普通です(つまりは発音されなくなったのです)。同様に、英語翻訳者たちも(英語では古英語以来、主格語尾は存在しないので)発音はいかなるものであれ、北欧語から翻訳する際にはこのrを表記しないのが慣例となっています。トールキンはもちろん古北欧語についても学んでおりましたし、慣例に基づいてrを表記しない一方で発音についても自分の言語感覚からvという発音にする旨を記したのだと思います。

 ヴェイグ(35)にガンダルヴ(36)、ヴィンダールヴ(37)、スラーイン(38)、セック(39)にソリン(40)、スロール(41)、ヴィト(42)に、リト(43)、ナール(44)にニューラーズ(45)、それにレギン(46)とラーズスヴィズ(47)の二人の小人の名もあげよう。

訳注
『エッダ-古代北欧歌謡集』谷口幸男訳(新潮社)10、18頁

Q サムがいつ指輪を外したか

さんから質問を頂きました。
粥村で聞いてみたい話として、サムが指輪をはめてフロドを捕えたオーク共を追い、洞窟の中で扉に当って気を失いますね。それから次に、一体どの段階でサムが指輪を外したか、僕はどうしても分らないんですが、誰か御存知の方はいないでしょうか?
 山田 隆志さんから、旧版『王の帰還』下13頁にあるとのお知らせをいただきました。新文庫版では14頁、新普及版では13頁です。

 さんから、その直前、12頁に「ふたたび指輪を引っ張り出して指にはめ」たとあります・・・・。との補足をいただきました。

 さんから補足を頂きました。
影山さんのご指摘のとおり、「王の帰還 下 13頁」(旧版)の「かれ(サム)は指輪をはずしました」という件は、同 12頁の「かれはふたたび指輪を引っぱり出して指にはめました。」という場面をうけての文章なので、サムはこの12頁の場面より以前に指輪を外しているはずなのです。

同 9頁において、

かれはオークの要塞の地下門の外のまっ暗闇の中にいたのです。

とありますから、「二つの塔 下 271頁」にある

トンネルの中はかれにはもうそれほど暗くは思われませんでした。むしろ薄い靄の中から抜け出して濃い霧の中に踏み込んだような感じでした。

というトンネルの見えかたの文章を考えると、「王の帰還 下」の冒頭でサムが気を取り戻す時にはすでに指輪は嵌っていず、彼の視力も通常の状態に戻っているような気がします。

しかし、「二つの塔 下 282頁」に

それとも指輪の与える聴力のいたずらか、距離の判断を誤っていたことに気づきました。

とあるように、サムは門にいたる最後の角をまがるギリギリまで、指輪を嵌めていたらしいことが伺えます。この後「二つの塔」の中で「恐ろしい喧噪が一時にどっと湧き起こる」のを聞き、「喚きながらつらぬき丸を振り回し」、門の「真鍮板に体ごとぶつかり」、「意識を失って地面に倒れま」す。

この間に指輪を(走りながら)はずしたのか、気絶している間に指から抜けているのか、どうも腑に落ちないんですよね。

Q ギルドール・イングロリオンについて

さんから質問を頂きました。
些細なことなのですが、とれそうでとれない魚の骨のような疑問なのでどなたか知っていたら教えてください。

『旅の仲間 上巻』でフロド達が最初に出会ったエルフのリーダーがギルドールですが、彼は「フィンロド王家のギルドール・イングロリオン」と名乗ります。(新訳の文庫版を読んでます)

しかし、『シルマリルの物語 下巻』の家系図にはギルドールの名前は見あたりません。これは
  1. 家系図に出てこないフィンロドの血縁
  2. フィンロドに仕えていた家来
のどっちなんでしょう?(ホントしょうもない疑問ですね)

また、ギルドールはフロドを「『エルフの友』と呼ぼう」と言います。シルマリルの物語の読むと「エルフの友」ってかなり重要な呼称のような気がするのですが、出会ったばかりで「エルフの友」というのもなんか軽々しいのでは? ビルボの跡継ぎだからかな? それともフロドの偉さを見抜いていたからでしょうか?

ギルドールは物語の初めでフロド達を助けてそれっきり出てきませんがそれなりに重要な人物だと思うのですが・・・。

A これだけ楽しめるのは決して「しょうもない疑問」ではないからでしょう。

Q 『指輪』そのものについて

JumpinJackさんから質問を頂きました。
追補版売ってないですねー、シルマリルも私の近所の書店には置いてありませんでした。てなわけで、また基本的な質問で恐縮ですが教えてください。今回は『指輪』そのものについての質問です。
  1. 本の扉に書いてある、あの有名な「三つの指輪は、空の下なる 云々」の詩なんですが、あの詩の主観というか、主体というか、つまり誰が、誰に対して、どのような状況で歌った物でしょうか? と、いうのは、あの詩はすべての指輪のおのおのの本来の所有者が記され、『一つの指輪』の優位性とその恐さが歌われています。このすべての情報を知っているものしか歌えないものです。てなると、Sauronがこの詩を作った? うーん、ちょっとしっくりきません。じゃ、Elf の誰か偉い人でしょうか?
  2. 『一つの指輪』は、最終的にサウロンが、滅びの山の火で鍛えた、とあります。では、エレギオンにまだサウロンが滞在していた時は、『一つの指輪』はどの状態だったのでしょうか? 最後の鍛錬が終了する直前だったのでしょうか? それとも『一つの指輪』は、あくまでもサウロン一人が、滅びの山で一から製作したものなのでしょうか?
  3. 『一つの指輪』以外の、3つのエルフ王向け、7つのドワーフの君向け、9つの人間向けの指輪は、誰の指示で、何の意図で作られたのでしょうか? サウロンがLoad of Giftsとしてエレギオンに近づいた時、彼の意図は巨大な力を持つ『一つの指輪』製作だけが目的だったのか、それとも他の19個も付随した目的の一つだったのでしょうか? それとも、「ひとつの指輪」制作過程における「試作品」的な意味合いだったのでしょうか?
  4. 指輪の幽鬼は、『9つの指輪』によって悪の道に導かれたようです。では、3つのエルフ用、7つのドワーフ用の指輪にも、そのような力があるのでしょうか? あるとしたらどのような力なのでしょうか? また、そのような悪の力があるとしたら、製作過程でエレギオンの細工師達は知っていたのでしょうか?
  5. 『指輪物語』の時点では、9つはサウロンが指輪の幽鬼に渡しています。7つのドワーフ向けもサウロンが所持しているようです。
    1. 3つのエルフ用のうち、一つはキアダン、もう一つは、えーとエルフの誰か持ってましたよね(すんません忘れました)、後一つは誰が持ってるんでしょう?
    2. また、9つの人間用、7つのドワーフ用、3つのエルフ用は、サウロンがエレギオンを去る時に持っていかなかったのでしょうか?
    3. 人間用の9つは、指輪の幽鬼用に持っていったのかな、とも思うのですが、その他は、特にドワーフ用の7つは、どのような経緯でサウロンが持つに至ったのでしょうか?

A 加津沙槻さんから回答を頂きました。さんからも回答をいただきました。

モルドォール! モルドォール! こーんーやーはー!(「ビートゥゲザー」のテーマで(伏線))
>JumpinJack様
今、原作が手元にないので、推論と記憶を頼りに書いてます。細かな間違いや勘違いや誤解があるかもしれません。ごめんなさいごめんなさい。(加津沙槻さん)
  1. サウロン様だと思います。あの詩が「あぶりだし」であったことを考えると、他の指輪の支配するぞという「呪い」の文句だったのでは。ボクは魔法使いじゃないので判りませんが(笑)。(加津沙槻さん)
    • エレギオン滞在時、「一つの指輪」がどんな状況であったか不明です。想像ですが、他の指輪の作成過程を眺めつつ、どんな力を込めれば「一つの指輪」が上位にたてるか研究していたのではないでしょうか。(加津沙槻さん)
    • ええと、一つの指輪について、ちょっと記憶だけでですが…。「鍛える」は多分単純にforgeだったでしょう。しかしそれよりもたしか、ケレブリンボールは姿を見たのではなくて、サウロンのつぶやきを「遠くから耳にした」のではなかったかな…。で、ガラドリエルがロリエンでやっていることなど考え合わせますと、もしその時ケレブリンボールが自分の作った指輪の一つをはめていたなら、エレギオンとオロドルインの距離など、「見る」にせよ「聞く」にせよ問題にならなかったのでは。フェアノールの孫であるケレブリンボールの、エルダールとしての潜在能力(?)が、ガラドリエルよりも下ということはないでしょう。(さん)
    • まず、各種族の王に、強力な魔法の指輪(便宜上、「19の指輪」と呼びます)を送ります。その上で、こっそり「他の指輪を支配する」という能力を持った「一つの指輪」を作成します。そうすれば、労せずして中つ国の全種族を支配できるということです。策士が策に溺れてるね!
      何でこんなことを考えたかというと、サウロンは元々、鍛冶のヴァラ・アウレ(ドワーフの作り手)に使えるマイアだったからですね。いかにも、元鍛冶のヴァラの部下の考えそうなことでしょう。
      「19の指輪」の作成はサウロンがプロデュースし、エレギオンのエルフが作り上げたと思われます。エルフたちは騙されたわけですね。なにしろ当時のサウロンはカッチョなモテモテ君だったそうですから(笑)。サウロンがコムロでエルフはカハラやアミーゴ… あわわ(笑)(伏線回収)(加津沙槻さん)
    • さんの回答です。
      • 3つと7つのちからの存在
        前者については、「JampingJack殿、貴殿は私の話を聞いておられなかったのか?」(byエルロンド)
        後者については、やはり『追補編』に言及があります。お楽しみに。
      • 指輪のちからについて

        一つの指輪についてガンダルフやガラドリエルが語るセリフや、はめた時にサムの心に浮かんだ幻想などを読むと、おおよそのところは想像できます。おそらく9つも含め、指輪ははめる者を露骨に悪に誘うようなことはしないのです。そもそもの目的が何であれ、それを達成するための「力」を渇望し、所有し続けようとする意志に、指輪は火をつけ、また実際にも「力」を与えるのです。やがてはその手段としての「力」そのものが目的にとって変わり、所有者は権力(=指輪)への渇望のとりことなり、いかなる「善政」も圧制に変じてしまうのです。9つでさえ、単純な手下を作るための道具などではないのがポイントだと思います。これは私の想像ですが、はじめは善き意志でもって9つのうちの1つを手にしたが、ついに堕落させられ幽鬼となった誰かの「悲しい話」について、ガンダルフは何か知っているのではないかな…。

        そして1つについては、サウロン自身に匹敵する者(この時代には殆どいませんが)がこれをはめれば、サウロンを打ち倒してナズグルを支配下におくことも潜在的には可能で、だからこそ彼は「いたずらにアラゴルンを恐れているのではない」(byレゴラス)のです。ガンダルフとデネソールの会話や、フロドとファラミアの会話も思い出して下さい。

        「(権)力」とその拒否、また「支配」と「統治」に関するトールキンの思想は、指輪の性格づけ以外にもあちこちに表れていて、まあ素朴ではあるかも知れませんが、非常に健全かつ「イギリス的」な民主主義思想でもあると思っています。他の(特にアメリカの)ファンタジーにはない、隠れた魅力の一つだと思います。

  2. たぶん、巧妙なトラップだったんじゃないでしょうか? 現代のテクノロジーであれば、「あれ? わけわかんないプログラムが組み込んであるなぁ、でもプロデューサーが必要だって言ってるんだから、まいっか」といったところではないでしょうか。Micro$oftの製品みた… あわわ(笑)
    19の指輪単体で悪の道に引き込む力はなく、さらに上位の「一つの指輪」が別に存在していたというのがポインツです。(加津沙槻さん)
  3. 加津沙槻さんの回答です。
    1. 火の指輪はキアダンが所有し、その後ガンダルフに譲渡されました。この指輪は人を奮い立たせる力があるからで、中つ国についたばかりのガンダルフの使命を一目で見抜き、譲渡したとあります。人を見る目ありすぎ。風の指輪はエルロンドが、水の指輪はガラドリエルちゃん(ちゃん言うなや)が所持しています。原作にちゃんと出てきますよん。
    2. 7つと3つは、すぐにエルフ・ドワーフの手で隠匿されました。サウロンはエレギオンのエルフを拷問してありかを聞き出そうとしましたが、7つについてはすぐに教えたモノの(ヒデェ)、3つについてはついに白状しませんでした。
    3. いろいろです。ちょっと書ききれません。不明なものもあります。(編註:『シルマリルの物語』下51頁によると、「龍たちの貪るところとなり、七つの指輪は火中に燃え尽きるか、サウロンの取戻すところとなった。」そうです。)

Q 大堀町町長とストゥア族について

JumpinJackさんから質問を頂きました。
またまた、疑問が出てしまったので教えてください。
  1. 大堀町 町長とホビット庄 庄長の関係について
    『旅の仲間』冒頭の序章『ホビット庄の社会秩序』の中で
    1. 『この時代のホビット庄で唯一の実際的な公務職は、大堀町の町長、すなわちホビット庄の庄長』と記載されています。大堀町はホビット庄の首府という記載もどこかでされていましたが、果たして町長 = 庄長と政治的に確定していたのでしょうか?
    2. もし 町長 = 庄長が確立されていたのなら、『町長としての唯一の仕事は、ホビット庄の祝祭日に催される宴会を主催云々』という記載は、町長ではなく、庄長としての仕事なのでしょうか?
    3. また、『町長職に付属している仕事に郵便局長と庄察長があった。』との記載も、町長ではなく庄長としての職務ではないでしょうか? 町長の職務としてならば、郵便及び庄察の及ぶ範囲は大堀町のみに限定されていたのでしょうか?
  2. 同じく『旅の仲間』冒頭の序章の『ホビットについて』の後半で、ストゥア族の記載がされていますが、その中で『雨でぬかるむ日には、ドワーフの長靴をはいた』との記載があります。
    この記載の意味が良くわかりません。
    • ストゥア族は、『川辺を好み』、『岸辺に長くとどまり』、『川のほとりの沢地』に多く住んでいたので、ぬかるみを嫌う支族とは思われません。
    • ドワーフとの接点はハーフット族が中心でした。
    以上により、『ストゥア族』・『ぬかるむ日』・『ドワーフの長靴』の三点で、作者は何が言いたかったのでしょうか?

A さんと加津沙槻さんから回答を頂きました。

  1.  ホビット庄と訳されている(The)Shireは、つまりランカシャーやバークシャーの「シャー」、そんなにきっちりした行政組織があった訳でもなさそうです。「町長」のところは原文では、The Mayor of the Michel Delving (or of the Shire) となっていて、「町長」と「庄長」にそれぞれ別の語があるわけではありません。つまり、正式には大堀町のMayorだが、実質的には庄全体のMayorである、といったニュアンスではないかと思います。
     ここからは私の想像ですが…。
     ピピンが自分の父を「地主」といっているように、Old(Brandy)buck家やTook家は、つまりかつての「領主様」で、それぞれその領地を実質的にも支配していたのではないでしょうか。
     「指輪」の時代にも、Bucklandでは「館主」の権威が受け入れられていたとありますし。
     またサムワイズの系図には、居住地が姓として定着していく過程が示されていますが、Bagginsももとは「Bag-Endの旦那様」くらいの意味だったのかも知れません。
     そうした封建的な統治形態の中で、大堀町は(おそらく唯一の)一種の自治商業都市だったのでは。市の日に町長を選ぶ、というのも暗示的です。封建領主達の支配が形骸化するにつれ、庄で唯一の公選職である大堀町長が、庄全体の郵便・警察業務を担うようになっていったのではないでしょうか。
     少なくとも、水の辺村や締金村にそれぞれ「村長」がいたとは思えません。従ってMayorといえば即ち大堀町長、実際的な行政業務は彼にお任せ、ということだったのだろうと想像しています。  だからこそ、大堀町に住んではいないサムがMayorになれたのでしょう。(さん)
  2.  
    • 「嫌っている」という記述が発見できませんでした。(加津沙槻さん)
    • 単に、ホビットとしては珍しく、靴を履く時があったということが言いたかったのでは。うーん、川辺の民が長靴を履いていてはいけない理由もないですし、長靴はドワーフ→ハーフット→ストゥアというふうに伝わったとか思ってますが。(加津沙槻さん)

Q ヌメノール関連の質問

 JumpinJackさんから質問を頂きました。
 以下のようにNumenor王国とその後の後継を理解したのですが、なんか大きな勘違いをしてるようです。添削してもらえないでしょうか?
  1. NumenorはMiddle earth西方の海に浮かぶ島の名前であると共に、そこにできた王国の名前であり、初代王はエレンディルである。また、Numenor人はすべて 人間族である。
  2. ただし、人間族はNumenor島だけでなく、Middle earthにも存在したが、国家形成は行わなかった。
  3. 太陽の第二世紀3319年に地殻変動がおこりNumenor島は沈没した。その時点でNumenor王国は終わった。
  4. Numenor沈没後、そこを脱出した Human族とその子孫は Dunedainと呼ばれる(国名ではない)
  5. 脱出した Dunedainは、Middle earthで翌年3320年に二つの国、Arnor王国とGondor王国を建国した。(各々の初代王は誰だったのでしょうか?)
  6. 二国は、エレンディルによって統一された。(国名はなんだったのでしょうか?)
  7. 上記統一王国の最後の王はイシュルドゥアである。彼はサウロンから指輪を奪い、Mondor王国を滅ぼした。
  8. 第三世紀 2年イシュルドゥアはあやめ野の戦いで敗北し、指輪はアンドゥイン川の流れに失われた。これによって、統一王国は崩壊し、再びArnor王国とGondor王国に分裂した。(各々の初代王は誰だったのでしょうか?)
  9. arnor王国は8代続いたが、エウレンダー王の死後内乱が発生し(なぜでしょうか?)滅亡した。王国は、アルセダイン国・ルダウア国・カルドラン国の三つに分かれるが、すべてDunedainの血を引く人間族の王国である。
  10. そのうち、本来のArnor王国の正統を主張できるのはアルセダイン王国であり、その為アルセダイン王国は引き続きArnor王国と表現される場合がある。
どうも『統一王国』てところでつまづいてるような気がするんです。どうかよろしくお願いします。

A どの資料までを参照するかは立場がいろいろあるのですが、とりあえず、『追補編』をざっと見たところでは次の通りです。
 さんと加津沙槻さんから補足を頂きました。

  1.  
    • 『追補編』9ページによるとヌメノールの島の名前は「エレナ大島」です。
    • Númenorの初代王はエレンディルではなく、エルロスです。これはエルロンドの兄弟ですから、王家には人間だけでなくエルフの血も入っていることになります。つまりアラゴルンは、自分の大々 々 々 々 々 々 々 々 々…(中略)…大伯母さまと結婚した訳ですね。(さん)
    • ヌメノールには「アカルラベース」「アタランテ」といった異称もあります。おそらく、後者が「アトランティス」の語源になったという構想なのでしょう。(さん)
  2. 「東夷」とか「ハラド」がいつごろからあるのか確認出来ないので、「国家形成は行わなかった。」と言い切れるかは?です。
  3.  
    • 「太陽の第二世紀」という記述はどこにあるのでしょうか? 第二紀のことでしょうか? 『追補編』12ページによると「地殻変動」の原因はアル=ファラゾンがヴァリノールを攻撃したことです。
    • ヌメノール没落については、「アカルラベース」(『シルマリルの物語』に収録)が詳しいですよん。(加津沙槻さん)
  4.  
    • 『追補編』索引によると「ドゥネダイン」はヌメノール国人も含むようです。
    • デュネダインというのは「西方の人々」の意で、おそらく「上のエルフ」同様の通称でしょう。これの単数形が「デュナダン」とビルボが解説してくれてますが、原文では「音に聞こえし」ではなく、単に"The Dúnadan" となっていて、これはトゥックの族長を"The Took"と称するのと同じような用法ですね。(さん)
  5. 『追補編』13ページによるとエレンディルとその息子たちがアルノールとゴンドールを建国し、エレンディルが上級王として北方のアンヌミナスを治め、南方の統治はイシルドゥアとアナリオンに委ねたとあります。
  6. 前項を参照ください。特に上級王の統治の範囲を示す名称は見当りません。
    • モルドールを「王国」としているところは見当りませんでした。
    • モルドールがツブれた原因はサウロンの(一時的な)消滅ですが、サウロンはエレンディルとギル・ガラドの上級王コンビと相打ちになり、その後指輪を(折れたナルシルの刃を使って)サウロンの指ごと切り落したのだそうです。(加津沙槻さん)
  7. 『追補編』14ページによるとあやめ野の殲滅の後、北方王朝はヴァランディルが継ぎました。『追補編』15ページによると南方王朝はアナリオンの後第二紀3440年からメネルディルが王になっています。
  8. 『追補編』18ページによるとエアレンドゥアの死後息子たち同士の不和のため王国が分裂したとあります。
  9. アルセダイン側の視点からすれば、正統性は、アムライスが長男だったこと、旧アルノールの王都であるフォルノストを継承していること、等から主張されたのでしょうね。追補編18,19頁にほのめかされています。(さん)

ガンダルフの言葉のニュアンスについて

 さんからお便りを頂き、その中に『王の帰還』のガンダルフの言葉について貴重なお話があったので特にお願いして、転載させて頂きました。
 「ホビットの冒険」も「指輪物語」も、初版の初刷で読んでいます。瀬田貞二氏の訳で、「指輪物語」が刊行されていたのが、10代の後半と重なります。
 ただ「王の帰還 下」だけは、出版が待ち切れずに、ペーパーバックを買って、身の程も弁えずに読みました。一週間で読破しました。バレンタイン・ブックス版で、1973年3月刊の36刷です。表紙が、図案化した怪物が進軍する軽薄なデザインで、がっかりした記憶があります。寺島龍一さんの荘重な挿し絵とは、比べるべくもありませんでした。銀座のイエナ書店には、これしかなかったのです。アラン・リー氏を始め、綺羅星のごとき才能が、百花繚乱と言える現在からすると、隔世の感があります。翻訳家の井辻朱美さんと、以前に一度だけ銀座の喫茶店で、話をする機会があったのですが、彼女もこれと同じもので、読んだとおっしゃっていました。作家の伊吹秀明君と岡野麻里安さんが一緒でした。
 この本は、ぼくに翻訳の文章というものについて、考えさせるっきかけになってくれました。
 たとえば、次のような言葉がありました。

「The Third Age was my age, I was the Enemy of Sauron; and my work is finished. I shall go soon. The burden must lie now upon you and your kindred.」

 ガンダルフが、自分の後継者であるアラゴルンに、その正体を自らの言葉で、ついに明白にする重要な場面ですね。大文字のEnemy。助動詞shallの効果。人間ではない主語burdenの重み。そして、your kindredという予言。どの単語にも、ガンダルフの強い気迫を感じさせられました。涙が出るほど興奮した記憶があります。それを、瀬田氏は、次のように流麗にさらりと訳していました。

「第三紀は、わしの時代じゃった。わしはサウロンの敵じゃったからな。そしてわしの仕事は完了した。まもなくわしはいくことになろう。重荷は今度はあんたとあんたの種族が負わねばならぬのじゃ。」

 意志よりも、諦観を感じさせる、老賢者の穏やかなものの言い方でした。初読の際に、強い違和感を感じました。瀬田氏は、セミコロンとピリオドを混同されています。接続詞は、累加並列の「そして」ではなく、説明補足の「つまり」ではないでしょうか。

「つまり、わしの仕事は完了したんじゃ。(だからして)まもなくわしはいくことになろう」

 「kindred」は、人間一般としての「種族」ではなく、ここはアラゴルンの「一族」であり「子孫」のことを、意味しているように思いました。そうでないと、次のニムロスの「子孫」の若木の発見から、アルウェンとの婚姻へと結びつかないように思えました。実際には、ガンダルフには、第4紀が人間の時代になるという洞察がありますから、ここはあくまで程度の問題に過ぎないでしょう。
 それでも、この時に、翻訳とは作品の一つの解釈なのだということを、教わりました。その後の読書の方向を変える経験でした。できるだけ原文にあたり、不可能な場合には、日本人の書いたもので我慢するという態度です。
 瀬田氏の訳を、貶めようとするつもりは、全くありません。ぼくは、氏の訳で「指輪物語」の世界を生きたのであり、それは後世に、より正しい訳文や訳語が提示されても、容易に変えられないものです。感受性の鋭敏な十代に、この大作に出会えたことを、彼には感謝しています。

Q エステラ・ボルジャーについて

 さんから質問をいただきました。
 数年前に『指輪』の原書を手に入れて以来の疑問なのですが、メリアドクの結婚や子供について、原書の様々な版ではどの様に記述されているのか、どなたか教えていただけないでしょうか。私が持っているのはBallantineのペイパーバック53版(1976)で、追補編Cの家系表から、メリーと三歳年下のエステラ・ボルジャーとの結婚がはっきりと、またこのエステラがフレデガーの妹らしいことがやや曖昧に、それぞれ読みとれます。しかし追補編Bの年代記は邦訳されたものと同様です。
 実は邦訳(旧版)を読んだ時から、年代記の記述については気になっていました。『二人は……めいめいの息子に譲り』とあるにもかかわらず、トゥック家や髪吉家のその後に比べ、ブランデーバック家については余り触れられていません。年代記編纂はトゥックのスミアルで行われたらしいので、その頃館主家と選侯家の関係があまり良くなかったのだとも考えられますが…。

A 手元にあるJ.R.R. Tolkien, A Descriptive Bibliography by Wayne G. Hammond and Douglas A. Andersonによると、Ballantine Booksの初版(1965)で系図のエステラ・ボルジャーが追加されたそうです。したがって、The Complete Guide to Middle-earth by Robert Fosterのようなアメリカで作られたトールキン人名事典的なものには「メリアドクはエステラ・ボルジャーと結婚した」とあるのですが、たとえば、1977年のUnwin Paperbacksには吸収されていないのがちょっと疑問です。

 さんからの追加コメントを頂きました。
 私見ですが、現在に至るもアメリカ版のみということなら、トールキンのあずかり知らない誰かの補筆という可能性が高いですね。
 1965年といえば、邦訳旧版が依拠している本国版の前年、彼は「著者ことわりがき」でいう「改訂」作業をしていた筈で、翌年出版された本国版に反映されていないのは不自然。それに、これは改めて確認したのですが、エステラの名前には、トゥック側の系図でも、ブランデーバック側の系図でも、下線が引かれていません。しかしフレデガーの五歳下の妹が、あの宴会に招ばれない訳がありません。 結婚相手だけ載っていて、館主家の後継ぎの名がないのも変です。
 アメリカの翻訳では、原書の構成や表現にかなりの(勝手な)変改を加えることが多いと聞きます。これはもちろん「翻訳」じゃないですが、ことがハリウッド的なロマンス~ハッピーエンド世界観に関わるものだけに、どうもあやしいような気がします。 偏見かも知れませんが、わざわざメリアドクのお相手を用意した上で、名前に下線を引くのを忘れるあたり、非常にアメリカンな感じがするのですが…。
 トールキン自身としては、あえて伝説の穴として残しておいたのではないでしょうか。高橋さんはじめ、みなさんの意見はいかがでしょうか?

 その後、alt.fan.tolkienでも聞いて見たのですが、最近の版ではエステラは宴会に出ているという答でした。では、Ballantine BooksだけがおかしいのかとWayne G. Hammondさんにメールを出して見たら、次のような回答を頂きました。

Dear Makoto,

Thanks for your message. I mean that as more than a courtesy, for while seeking to answer your questions I discovered some interesting (if minor) points to be made as addenda and corrigenda to my bibliography, and elsewhere as well.

>Your A Descriptive Bibliography says that Estella Bolger
>was added in 1965 to Ballantine Books edition.

I corrected this in an issue of The Tolkien Collector. In fact Estella Bolger was added in the third impression (1966) of the Ballantine Return of the King. But I had not noticed before that she was added not only to the Brandybuck family tree, as Merry’s wife, but also to the Took family tree, as the sister of Fredegar Bolger.

>My friend says her name is not underlined in Ballantine Books 1976.

That’s correct.

>In alt.fan.tolkien, I heard that her name was underlined in later editions.
>Was her name underlined in 1965 and dropped for paperback of 1976?
>Or, was the underline added in later edition?

Estella Bolger’s name, in both of the family trees in which she appears, is not underlined in any printing of the Ballantine edition. The underline appears to have been added first to the Houghton Mifflin edition of 1987, and has continued into the current British and American reset editions.

Best wishes,

Wayne

 つまり、 とのことのようです。

 さんからHarperCollinsの1999版のぺーバーバックのDouglas Andersonさんの「NOTE ON THE TEXT」についての情報を頂きました。

 トールキンは1966年にBallantineに改訂原稿を送り、これにEstella Bolgerの追加が入っていました。この改訂が、7月の第3刷と8月の第4刷に取り入れられました。なぜか、英国の3巻本には長く取り入れられず変則な状態が続いていました。
 1987年のHoughton Mifflin版でようやく、この訂正が取り入れられました。この版からテキストが電子化されて今後のテキストの統一に資することとなりました。

Q 本の表紙のキアスやフェアノール文字

 さんから質問をいただきました。
 本の表紙に書いてあるキアスやフェアノール文字は何と書いてあるのでしょう。表紙の上は何となく読めそうなのですが、下の段半ばで挫折しました。ずーっと気になって仕方がありません。表紙の四隅の文字も、何なのだろう?と気になります。
A 『指輪物語』の扉の上にはアンゲアサスがあります。これについては、追補編E2 書記法に音価の表(普及版170,171ページ)があります。この表によると次の通りと思われます。
キアスの番号1155315012950411551239363581248223531488931250611551246925118
音価dhelordovdheringstranslatedfromdheredbook
英語TheLordofTheRingstranslatedfromtheRedBook
 55番はその原形の「46番を半分にした形で、butter(の語尾で)聞かれる母音」とおもわれます。発音記号でいうと逆様の[e]です。また、全体に普及版165ページに「ゴンドールの人間だったら、かれらにとって親しい文字の音価と、英語の文字の綴り方との間に立って、ためらいがちに、こうも書いてみた」という説明があるので、dheがtheのことでovがofのことのようです。translatdのtdのtにあたる8番の下に点が付いているので、「弱い曖昧な母音を表す」というのとでeも表していると思われます。51番は表ではoの上にマクロンが付いていますがここでは文字の形からいっても2個のoを示すのでないでしょうか。また、中丸は単語の区切りのようです。以上をまとめると、3段目の英語のことでしょう。
 扉の下にはテングワールがあります。Daniel Steven SmithさんのTengwarに解説がありました。 1行目
テングワールの番号14*22291182136s73317251727525ss271274s173325173129110219
音価ofwestmarchbyjhonronaldreueltolkienhereinizsetforth
英語ofWestmarchbyJohnRonaldReuelTolkien.Hereinissetforth
2行目
テングワールの番号13*3329125s14**222114**2520513*2516514**4203229ss56s13*3361
音価thehistoriof theworof thering(a)ndthereturnof thekingazseenbythehobbits
英語thehistoryof thewarof theringandthereturnof thekingasseenbythehobbits.

 表紙の四隅のキアスですが不思議ですね。向きもまちまちですし・・ 上下さかさまだと違うキアスになるのですが。
左上右上左下右下
3巻本の表紙18番 k(下向き)11番 dh(下向き)35番と中黒s 36番 z
3巻本の裏表紙13番 ch12番 n51番 o(下向き)6番と中黒
普及版の表紙18番 k11番 dh35番 s と中黒36番 z
文庫版の表紙12番 n31番 l11番 dh6番 m

Q ルーン文字について

 さんから質問をいただきました。

A 世間一般で使われている「ルーン文字」とは『広辞苑』(第三版)によると、

古代ゲルマンの文字。ギリシア文字から変形発達。魔除け・墓荒し除けのために、刀剣や墓石に彫り刻まれた長短の直線形の文字。キリスト教の普及と共に次第にすたれる。
とあります。ラテン文字との対応も自然で、だいたい見当が付きます。『ホビットの冒険』の英語版ではタイトルに使われたり、スロールの地図にも書かれています。スロールの地図は日本語版でも載っていますが、英語の文章をルーンに置き換えているので英語版がないと対応が付きません。
 『指輪物語』では、「ルーン文字」は「キアス」の翻訳とされていて、「文字」と訳されている「テングワール」と区別されています。「キアス」の音価は音韻体系にあわせて整理されていてもっとやっかいです。おそらくトールキンが赤表紙本を訳して『ホビットの冒険』としたときには簡単のために、われわれの世界のルーンに置き換えたのでしょう。
 キアスについて詳しくは『指輪物語』の追補編をどうぞ。普及版では第7巻なんですが、文庫版では省略されています。

Q D & Dの伝説

 Dungeon and DragonでHobbitでなくhalflingを使ったのは、著作権のためという話はどこが起源ですか?

A 「著作権のため」というのはHobbitのような単語の場合当てはまらないのですが、なぜか広く流布しているようです。ほとんどパターンが一定しているので何か一つのソースがあるはずですがまだ見つかっていません。この話が出るたびに「どこに書いてありましたか?」と聞いて回っているのですが・・・

 さんから次のお知らせを頂きました。
さて、“Hobbit”と著作権の噂の出所を探しておられるとのことですが、私が見た最古の記録は東京創元社のゲームブックに折り込まれていた“Adventurer’s Inn”という小冊子と新刊案内の中間のようなものです。 その文章を書いたライターが誰なのかとか、出典はどこなのかということは全く記憶にありません。なにせ10年ほど前、小学生のころのことなので…。実家の押入れにつまっているかもしれませんけど…。
 当時はゲームブックがブームで、それを足がかりにテーブルトーク RPG のプレイ人口を増やそうと努力されていたようで、小説案内や種族紹介、武器紹介などの企画があったように記憶しています。
 この“Hobbit”の件をはじめとして、今に続く勘違いファンタジーの布石となるようなものもありましたが、楽しい時代でした。

Q 『フィルムブック指輪物語』のこと

 『フィルムブック指輪物語』前編とありますが、後編はないのですか?

A バクシの映画の後編が作られていないので、今の所出ていません。現在でも前編は手に入ります。高橋の場合、「トールキン好きです。」と話すと一番多く聞かれる質問です。

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