工事は近所の富岡八幡宮で行った安全祈願祭から始まりました。並行して現場事務所、工事関係掲示板の設置を行い、足場架設のための自転車移動、専用庭の植木等の移動を居住者の方にお願いしました。
毎週土曜日の夕方に、三者(工事請負会社、工事監理会社、修繕委員会)の定期会合を開き、そこで工事の進み具合のチェックと工事を進める上での問題点確認及び解決策の検討を行うことにしました。
実際に工事が始まると様々な問題点が発生しました。そのいくつかを以下に列記しますが、経験不足のために起きた問題の他に日常の管理が不十分であったために起きた問題もあり、管理組合のあり方について考えさせられました。
自転車仮置き場
工事準備を始めてすぐ問題が発生しました。当初、自転車置き場は半分ほど使えて、一部を移動すればよいと考えていましたが、実際には全面的に移動する必要があり、自転車仮置き場のスペースが足りない事が分かったのです。緊急に理事会で検討した結果、二階建ての仮置き場を作るなどのアイデアが出ましたが、何とかスペースを探して収納することで乗り切りました。玄関の通路にも自転車が溢れ、通行にも不便な状態で、居住者の方にも大変迷惑をかけました。もう少し前に分かっていれば、自転車の整理も出来たのですが。(私たちのマンションは自転車を毎年登録する制度を導入していたので、今年の分を早めに実施しておけば良かった。自転車共有制度の導入で自転車の総数を減らしておくことも可能だった。)
機械式駐車場
次に発覚した問題は、駐車場に関してです。敷地内の駐車場は一部が二段式の機械駐車場になっているが、その施設が予想以上に痛んでいることが分かったのです。常日頃塗装をするなど手を入れていれば、こんなにひどくはならなかったと予測され、メンテナンス会社、管理組合、利用者、管理会社の管理体制に問題があったようだ。
調べてみると油圧で上下する方式は、メンテナンス費用が高価で、最近はあまり使われなくなっているようです。費用対効果の点からも、この際全面的に入れ替える案も出されましたが、検討した結果、傷みのひどいパレット部分のみ全数交換しピット内の排水を改善することになりました。費用は工事の予備費だけでは賄えないので、新たに積立金を取り崩す総会決議(工事期間内の定期総会)をしました。管理会社まかせのメンテナンス契約内容チェックと日常の管理の大切さが身にしみました。
ベランダ工事
工事に必要なベランダの整理に関しても問題が発生しました。ベランダにタイルを敷き詰めている人があり、撤去費用が高価で個人負担できないと撤去を拒んだのです。本来、ベランダは共有部分でありタイルを敷き詰める等の無断改変工事は禁止されています。しかし現実に発生してしまった場合の処理に苦労しました。このような問題は、日頃から広報等で十分に周知しておく必要があります。
各家庭のベランダにはエアコンの室外機や植木類があり、防水工事のためには全面的に移動しなければなりません。植木類は部屋の中に収納するには量が多いため、敷地内に一時置き場の台を作りました。そこへ各家庭で植木を運んでもらい、水やり等の管理と撤収も各自の責任で行いました。しかし結果的には枯れてしまった植木が多数発生したこと、最後に撤収されずに残ってしまった植木類も多く出て、あまり良い方法ではなかったようです。しかし、他によい案は出ませんでした。今後の課題です。
工事終了後のアンケートで一番不満の多かったのが、ベランダ工事に関することでした。塗装のために窓や換気口やエアコン室外機に養生(ビニールで覆う事)をしたために、室内が蒸し暑く不快な生活を強いられたからです。各家庭の工事期間は二週間ほどでしたが、生活者にとってはつらさの一番の山場です。いつ洗濯ができるのか、いつビニールが取れるのか、いつエアコンが使えるのかと1日千秋の思いでした。玄関周りの工事も含め、生活に直接関係する工事は期間を短縮する方法、きめ細かい連絡など施工側の工夫を是非お願いしたいところです。私たちがお願いした業者の方も、その辺は十分に理解していたのですが、現在良い解決策はないようです。業界全体として新しい技術開発(工事法、工程管理システム)を出来ないものでしょうか。
ダクト清掃
台所や風呂場の換気扇ダクトの清掃では予想外の問題が発生しました。今回の大規模修繕は専有住居の外部を中心に実施しましたが、台所の換気扇排気口からの汚れが外壁の汚れを加速する恐れがあったので、唯一の例外として専有住居内部の天井裏排気ダクトの清掃も一斉に実施しました。その過程で、吸気ファンに吸気ダクトが接続されていなかったり、接続が間違っていて逆流したりしている箇所が発見されました。接続部分がテープでしっかり固定されていないため振動音が大きいものもありました。天井裏のダクトは普段は見ることもないので、居住者の方もおかしいなと思いながらそのままにしてある場合が多いようです。
点検口から簡単に直せる場合は問題ないのですが、場所によっては天井の一部を切り取る工事が必要になり費用負担が問題になりました。明らかに新築時施工の欠陥なので、費用負担は新築施工業者と折衝しました。この件に関しては施工業者も非を認めて、工事はその業者が行いました。
同様な問題は今回は対象にしなかった床下の排水管や電気工事など、通常の生活では気付かない部分にも発生する可能性があります。大規模修繕工事はこの様な新築時の瑕疵を発見する可能性が高く、保証期間の考え方に大きな問題提起をしていると思います。その意味で大規模修繕工事は、新築を担当した業者とは別の業者に依頼したり、改修設計はデベロッパーに依存しない設計事務所などに頼むのも意味があると思います。
工事予定の広報
修繕工事の特徴は、なんと言っても生活をしながら工事をしなければならない事です。生活者の実感としては、まるで工事現場に住んでいるようでした。そのような状況で住民が知りたい情報は、自分の家に工事が来るのは今日なのか、明日なのかということです。一方、工事をする側では数日の期間内に何軒かをまとめて処理したい事情があります。この数日のずれがいろいろな誤解を生み、住民の不満が現場事務所に寄せられることになります。
また、奥さん同士の情報網で、工事の進行より情報が先行して、私の家はきちんとした工事がされていないなどの不満がありました。工事の内容は細分化されており手順に従って実施されるのですが、生活している側からはそれが良く見えません。工事業者には広報はなるべく細かくしてもらうように頼みましたが、限界があります。工事全体が見えるように分かり易く表現し広報する点に関しては、良いアイデアはありませんでした。工程管理と住民への広報をきめ細かくリンクできるようなソフト開発が必要ではないかと感じました。