ティティの本棚

2001.8.30 高橋 誠

 ランサムサガに関連する書籍の紹介です。

The Revenge

 「わたしたち、スペイン艦隊かんたいのまっただ中のリベンジごうみたいになるわね。」と、ティティがいった。「万に一つもち目はないわ。」
『海へ出るつもりじゃなかった』295頁
 まず見つかった資料は、アレグザンダー・フラートンの『リベンジ号最後の海戦』(高沢次郎訳 三崎書房 1984)です。残念ながら、三崎書房は倒産して現在入手不可能と思われます。
 1591年、リチャード・グレンヴィルはリヴェンジだけを率い、53を数えるスペイン艦隊に戦いを挑み、15時間の激戦の末、スペイン艦3を沈没させながら、自らも戦死します。「当時の砲の威力が低くて砲戦だけでは決着がつかなかった。」なんて、色気のないことをいってはいけません。本書の訳者あとがきによると、
 リベンジ号の壮絶な闘いぶりは当時の英国民を熱狂させたが、現在にいたるまでその物語が英国民に広く知られているのは、桂冠詩人テニスンが1880年に発表した詩“The Revenge”によってである。教科書にもたびたび採録されたこの詩が、リベンジ号の名を改めて英国民に印象づけて今日に至っている。
とあります。ティティがこれを暗唱していたのはほぼ間違いないでしょう。
 テニスンほどの詩人なら翻訳の詩集が出ていると思ったのですが、テニスンだけの詩集は現在手に入りません。また、英米詩選集みたいなものではこのような戦意高揚ものは無視されているようです。次の原語の詩集をようやく手に入れました。

SELECTED POEMS OF TENNYSON edited with an introduction and note by EDMUND BLUDEN
HEINEMANN EDUCATIONAL BOOKS LTD LONDON

 Alfred Lord Tennysonは1892年に亡くなっていますのでThe Revengeに全文を掲載させていただきました。ティティの真似をして暗唱しましょう。冒頭の日本語訳を『リベンジ号最後の海戦』より引用させていただきます。
ところはアゾレス諸島フロレス島、
待ちうけるはリチャード・グレンビル副司令官。
舞台の幕開けは一隻の中艇ピンネース
羽ばたく鳥のごとく、遠方より飛来した。
「スペイン艦隊の接近を視認せり! その数、五十三隻!」
司令官のトマス・ハワード、その報に声を張り上げ、
「神かけて、我は卑怯者にはあらず、
なれど、ここで彼らを迎え撃つ能わず、
わが配下の艦、いずれも状態万全ならず、
乗組員の半数が病に倒れればなり。
疾く退却するに如かず、いざ用意せよ。 われらが戦列艦わずか六隻、
如何ぞ、五十三隻と戦い得よう」

ホーム(x)


 Amazon.co.jpアソシエイト